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2024.01.04 11:00

共産主義国家で生まれてウォール街で富豪になったピーターフィーの投資観

日下部博一
フォーブス:自身の資金も少し投資した。最初の大きな投資は何だったのか?

ピーターフィー:90年代後半に投資したナイト・トレーディング・グループだった。我々と同じマーケットメイクの会社だった。社内を案内されて見て回ったが、何百人もの従業員が端末の前に座って、他の会社から入った注文の量を見て逆張りをしていた。時価総額は覚えていないが、非常に大きな額だった。株価は1株150ドルくらいだったと記憶している。そこで半日を過ごし、本当にひどいことをやっている会社だと確信したので、株を大量に空売りした。株価はそれから3カ月で150ドルから20ドルくらいまで下がった。大儲けした。3000万ドル(約42億円)くらいだったと思う。

フォーブス:他の企業でも空売りをしたのか?

ピーターフィー:そうだ。私にとって空売りすべき時を見極めるのはいつも簡単だ。株価が非常に高いと思ったら、「なぜそのように上昇しているのか」と自問する。そして、調べてみると、そこには大して何もないことに気づく。大量の分析をしないという前提ならば、空売りする銘柄は買い持ちする銘柄よりも見つけやすい。買いから入る場合には、多くの準備が必要だからだ。一方で空売りは、ネットでもてはやされた「ミーム株」騒動で目の当たりにしたように、時には損失を被ることもある。幸い、私はそのようなことには巻き込まれなかった(笑)。

フォーブス:大きな空売りをして損失を被ったことは?

ピーターフィー: 70年代後半にデュポンで大きな失望を味わった。私は自分の貯蓄だけを投資していた小心者で、それが私の資金のすべてだった。ある時、私が取引フロアにいると、人混みの中に入ってきた誰かが満期まで数日しかないデュポンのオプション取引のコールオプションを300枚売ろうとしていた。私はそれを1枚18ドルで買い占めた。私にとってそれまでで最大の取引だった。

その男が出て行くと、別の人が入ってきて500枚(のオプション)を買いたいと言った。突然の、5分間という超短期での利益に浮かれ、その人にコールオプション500枚を31ドルで売った。私はかなりの利益を上げたが、問題は200枚余計に売ったことだった。

そして、その男が立ち去ると同時に市場は引け、デュポンが素晴らしい業績を上げ、株を3分割するというニュースが流れた。私が31ドルで売った200枚のオプションは、それぞれ450ドルで買い戻さなければならなかった。これは8万ドルくらいになり、10年間取引に費やしてきた資金の半分に相当した。大打撃だった。人生で最悪の取引だった。

フォーブス:その経験から学んだことは?

ピーターフィー: 安いオプションは絶対に売らないこと、そして、こういう状況では他の人が内部情報をもとに取引している可能性があることに十分注意する必要があることを学んだ。
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翻訳=溝口慈子

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