今回は、スタートアップのCxOを歴任した植野大輔さんによる「大胆不敵なキャリア戦略」コーナーで5回にわたって配信した「プロジェクトマネジメント」に関する記事を掲載します。
実は、日本のデジタル変革(DX)が進まない要因の大きな一つが、日本企業のプロマネ力の弱体化にあります。
ここまで多くの日本企業は、現場努力を核とした日々の業務効率化や改善に取り組んで来ました。
一方でDXプロジェクトは、部署を横断したり、ときには外部の専門家も交えたチームで、一定期限内にゴールを達成するという、日々の業務改善とはまったく違う筋肉が求められます。しかし中堅以上の社員、場合によっては役員ですら、ハードなプロジェクトをやったことがないという理由から、会社組織としてプロマネの経験の総量が不足しています。
現時点でAIにもできないのが、このプロマネであり、若手はこの能力を鍛えるだけで同世代と差をつけることができます。ただ昨今では、足りないプロマネ力を外注してコンサルファームに求めるわけですが、ますます若手にプロマネ力がつかないことになってしまいます。何より皮肉にも、こうしてプロジェクト経験を積んだコンサル出身者が、重宝されるわけですが……。
私は以前、ファミリーマートのDX責任者を務め、ファミペイの立ち上げなどをしましたが、それができたのは、三菱商事とBCGで、プロジェクトリードのやり方を、研修やOJTを通じて徹底的に鍛え上げまくったからです。拙著『トランスフォーメーション思考』でも、変革プロマネ手法のさわりを紹介しています。
先ほど、中堅以上でもプロマネの経験値が不足していると書きましたが、さまざまな企業のDX支援をするなかで「DXとは別に、植野さんの仕事の進め方を社員にレクチャーしてくれないか」と相談を受けることが少なくありません。そして、スペシャルメニューで研修をやったりします。
では、どう鍛えていくのか?私が実施している企業役員やリーダー候補生向けの研修トレーニングでは、5つの武器をマスターするよう伝えています。
具体的には
1. ディシジョンデザイン
2. アジェンダマネジメント
3. ワークプランニング
4. ファシリテーション
5. ダッシュボード
です。
1. ディシジョンデザイン
まずはディシジョンデザイン。プロジェクトという言葉は誰しも簡単に使いますが、なぜ“業務”や“仕事”ではなく、わざわざ“プロジェクト”と呼ぶのか?それは日々の部署での反復的業務と異なり、期限ある一定の目標を、集められたメンバー、予算の中で達成しに行くもので、ゴール、期限、メンバー、予算という特殊性があるからです。