経済・社会

2023.12.29 10:00

「ボイコット」の効果を検証 人口の3.5%が参加すれば政治は変えられる

1965年9月、米カリフォルニア州の町デラノのブドウ農園でストライキが起こった。のちに米国史上最も重要なストライキの1つと呼ばれるようになったこの労働争議では、2000人を超えるフィリピン系米国人の農場労働者が、低賃金に抗議してブドウ摘みの仕事を拒否。ストライキは5年間続き、食用ブドウの不買運動も行われた。全米農場労働者連合(UFW)傘下の組合に加盟するカリフォルニアの労働者たちは、非組合員の収穫したブドウの積み込みを拒否したため、ブドウは腐敗。1968年1月にはカリフォルニア産食用ブドウの全面ボイコットにまで発展した。1970年7月、地元の生産業者はブドウ摘み労働者の賃上げ、組合の医療保険制度への資金拠出、畑で使用される農薬からの労働者の保護に合意した。

最近では、10月7日のパレスチナ武装勢力ハマスによる越境攻撃を受けて、ガザ地区でイスラエルの軍事行動が激化し流血の事態が拡大する中で、イスラエルに対する「ボイコット、投資引き揚げ、制裁(BDS)」運動が盛り返している。もともと2005年に立ち上げられたBDSは「自由、正義、平等を求めるパレスチナ人主導の運動」といえる。今回「パレスチナ人にとってイスラエル建国後75年間で最大の犠牲を出している紛争」で、2万人以上のガザ住民の殺害にイスラエル軍が関与していることに抗議するため、イスラエルと関係のある企業を対象とした不買の呼び掛けが2カ月以上続いており、これは功を奏しているとみる向きが強い。米コーヒーチェーン大手スターバックスは消費者ボイコットの対象企業の1つだが、10月中旬にボイコットが始まって以来、市場価値の下落が報じられている。

ボイコットの効力については懐疑的な見方もあるかもしれないが、歴史を振りかえれば、実際の効果のほどに疑問の余地はない。ただ、注意が必要な点もある。ボイコットは社会変革のための数ある手段の1つであるべきだ。他の集団行動、たとえば意識向上キャンペーンや、直接影響を受けている人々のニーズ拡大、議員への陳情と具体的な情報の提供などと組み合わせることで、変化は起こせる。米ハーバード大学の政治学者エリカ・チェノウェスの研究によれば、本格的に政治を変えるために必要な参加者は人口のたった約3.5%だけだ。どんな行動も小さすぎるということはない。池に投げ入れられたのがどれほど小さな石でも、波及効果が生まれ、その先何年にもわたって社会により大きな変化をもたらすことを忘れてはならない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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