バドライトは今年初め、米国で最も人気のあるビールの座をモデロ・エスペシアルに奪われていた。同社によると、米国での営業利益は30%近く減少した。4-6月期の会社全体の販売量は1%余り減少したが、米国での売り上げは期末には安定化。世界全体での売上高増加により、総売上高は前年同期比7.2%増の151億ドル(約2兆1000億円)に達した。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、かつてバーやレストランで最も売れていたバドライトは注文が34%減少し、ミラー・ライト、ミケロブ・ウルトラ、クアーズ・ライトの後塵を拝している。
保守派のボイコットは、バドライトが4月、TikTokでのインフルエンサーマーケティングとして、多数のフォロワーを持つトランスジェンダー女性ディラン・マルベイニーの顔が描かれたバドライトの缶を本人に送ったことがきっかけだった。この直後、バドライトとバドワイザーの売り上げはそれぞれ24.6%と9.2%減少した。
元ブロードウェイ女優のマルベイニーは、TikTokで1年以上にわたって性別移行の過程を投稿し、1100万人のフォロワーを獲得した人物。バドライトとのコラボレーションについては、それまでこのビールを愛好していた人々からの反発が相次いだ。
歌手のキッド・ロックは、バドライトの缶を銃で撃ちながらアンハイザー・ブッシュを罵倒するビデオを投稿。カントリー歌手のトラヴィス・トリットは、自身のコンサートでは今後、アンハイザー・ブッシュの製品は売らないと宣言。同じくカントリー歌手のジョン・リッチは、ナッシュビルで経営するバーからバドライトを撤去したことを明らかにした。
バドライトの宣伝から数日後、マルベイニーはナイキとのコラボを発表。これに対しても、元五輪選手のシャロン・デイビーズやケイトリン・ジェンナーからボイコットを求める声が上がった。ジェンナーはマルベイニーと同じくトランスジェンダー女性だ。
マルベイニーは6月、自身に対する個人攻撃が相次いだ後もアンハイザー・ブッシュから連絡がなかったして、同社を批判。企業がトランスジェンダーの人物を雇っておきながら、その人物を支持する立場を表明しないことは「トランスジェンダーの人を全く雇わないよりも悪いことです。なぜなら、顧客のトランス嫌悪や憎悪を全面的に認めることになるからです」と語った。
(forbes.com 原文)