RNA(リボ核酸)の解明に挑む がんの新たな治療法を探すために

チリ大学のロベルト・ムニタ(Universidad de Chile)

あるチリ人研究者とそのチームは、がんなどの病気の治療方法の開発にいつの日か役立てるために、RNA(リボ核酸)の謎を解明しようとしている。

RNA治療の世界市場規模は、2023年に137億ドル(約2兆円)と推定されているが、私たちの身体の構成要素を作る働きをする分子機構の一部であるRNAに潜む謎を解明することは、科学者たちの大きな関心事でもある。

チリ大学慢性疾患先端研究センターの准教授であるロベルト・ムニタ・ロバートは、RNAが遺伝子発現を制御する仕組み、すなわち、遺伝子にコード化された情報が、タンパク質の組織化にどのように指示するために使われているのかを、より深く理解することを目標にしている。

「ノンコーディングRNAや、スプライシング、RNA修飾といったRNA関連プロセスにおける変化が、がんなどの病原体にどのような影響を与えるかについても興味があります」とムニタは語る。「重要な細胞機構であるリボソームとスプライソソームの2つに、私たちは注目しています」

リボソームは、体内のタンパク質合成工場として知られており、メッセンジャーRNA(mRNA)を通じて指示を受け取る。mRNAは、すでにスプライソソームによってノーコーディング領域を除去されている。リボソームはこれらの指示を用いて、合成の際にどの順番でアミノ酸をタンパク質鎖につなぐかを決定する。

ムニタは、スウェーデンのルンド大学でポスドクとして研究していた期間に、人間の体内のリボソームとスプライソソームはすべて同じではなく、一部の細胞組織は他と明確に異なる分子機械をもっているという証拠を、研究チームが発見したと説明した。

「この変異は、がんなどの特定の病的状態の下で変更されたものと思われます。もし、このプロセスを制御している機構を完全に理解できれば、この知見を用いて新たな視点から病気を捉えることが可能になり、RNA治療を開発するための新たな治療標的を同定することができます」とムニタは語った。
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翻訳=高橋信夫

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