米国で広がる「ゾンビ鹿病」 イエローストーン国立公園でも初確認

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米国で「ゾンビ鹿病」とも呼ばれる慢性消耗病(CWD)が野生の鹿などの間で広まっている。14日には、イエローストーン国立公園で初の感染例が確認された。CWDは牛海綿状脳症(BSE)と同系統の感染症で、人間にも感染する可能性が懸念されている。

CWDはシカ、ヘラジカ、カリブー、トナカイ、ムースなどの偶蹄類が罹患する伝染病で、感染すると必ず死に至る。

CWDはプリオン(異常な形に折りたたまれたタンパク質。感染性があり、近くの正常なタンパク質を同じ構造に折りたたんでしまう)によって引き起こされる。感染すると、脳と神経系が徐々に破壊され、急激な体重減少(消耗)や、頭を下げる、よろめく、元気がない、よだれを垂らすなどの症状が現れることから「ゾンビ鹿病」と呼ばれている。

糞便、唾液、血液、尿などの体液に直接触れたり、感染性物質で汚染された物や環境に間接的に触れたりすることで感染する。ワクチンや治療法はない。プリオンは不活性化することが非常に困難で、CWDなどのプリオン病が一度その地域に定着すると根絶はほぼ不可能とされる。

CWDが人間や家畜に感染した例は確認されていない。だが米疾病対策センター(CDC)は、もし感染するとすれば、感染したシカやヘラジカを食べることが原因となる可能性が高いと説明している(調理してもプリオンが「死ぬ」ことはない)。

CDCは、CWDの生息地域で狩猟をする際には、病気に見えたり、死んでいたり、奇妙な行動をしている動物を避けること、肉を食べる前に検査すること、解体する際には手袋を着用した上で家庭用ナイフの使用を避けること、動物の臓器、特に脳や脊髄には触れないことをハンターに呼びかけている。

CWDは伝達性海綿状脳症(TSE)の一種。他のTSEには、狂牛病とも呼ばれるBSE、スクレイピー、クールー病、クロイツフェルト・ヤコブ病などがある。CWDは飼育下のシカでは1960年代、野生のシカでは1990年代に初めて確認された。米政府のデータによれば、現在までに米国本土の少なくとも29州で報告されている。米国以外では、韓国、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、カナダの症例が報告されている。
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翻訳・編集=遠藤宗生

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