北米

2023.07.12 12:00

「ゾンビドラッグ」乱用が米国で拡大 政府が対策を約束

Todorean-Gabriel / Shutterstock.com

米政府は11日「ゾンビドラッグ」とも呼ばれる動物用鎮静剤のキシラジンと、オピオイド鎮痛薬のフェンタニルを組み合わせたドラッグの乱用による死亡例が国内で相次いでいること受け、暫定的な対策を発表した。

「トランク」とも呼ばれるキシラジンは、動物用の強力な鎮静剤で、人間に対する使用は承認されていない。フェンタニルやヘロイン、コカインなどに混ぜることでドラッグの効果が増幅し、取引価格も上がる。使用すると皮膚がただれる症状が出るほか、オピオイド鎮静剤の過剰摂取の治療に有効なナロキソンなどの薬が効かないため、特に危険な薬物となっている。

バイデン政権は、キシラジン関連の過剰摂取による死亡者の数を今後2年間で15%減らすことを目指すと表明。一方で、人間を対象とした検査の不足や、医薬品の検査体制の整備不足から、キシラジン乱用問題の規模を正確に把握できていないことを認めた。

キシラジン乱用問題について会見した米民主党のチャック・シューマー上院院内総務。2023年3月26日(lev radin / Shutterstock.com)キシラジン乱用問題について会見した米民主党のチャック・シューマー上院院内総務。2023年3月26日(lev radin / Shutterstock.com)

具体的な対策としては、押収されたドラッグの検査の強化、医療現場で使用できる迅速検査の開発、病院での過剰摂取患者の検査実施を約束。また、キシラジンが人体に及ぼす影響や、フェンタニルと混ぜた際の効果について研究を行い、解毒薬の早期開発を目指すとした。

米国では、キシラジンに関連した薬物過剰摂取による死者が急増している。特に併用されることが多いのがフェンタニルだ。連邦政府機関のデータによると、キシラジンが検出されたフェンタニル過剰摂取による死者は2019年1月から22年6月にかけて276%増え、薬物過剰摂取の死者全体に占める割合は2.9%から10.9%に増加した。

検査体制が不十分であることから、実際の数はこれよりも多い可能性が高い。ただ、近年急増しているフェンタニル乱用の死者とくらべると、キシラジン関連の死者は比較的少数にとどまっている。

米疾病対策センター(CDC)のデータによると、米国では昨年、約10万9000人が薬物過剰摂取により死亡した。年間の死者数は2020年から15%近く増加し、初めて10万人を超えた。

forbes.com 原文

翻訳・編集=遠藤宗生

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