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2024.01.09 12:15

限界寸前から「稼ぐ町」へ 山形県西川町・元官僚町長の生き残り戦略とは

山形県西川町の菅野大志町長 町財政のため「予算6原則」を掲げる

クレイ:その提案内容によって、企業版ふるさと納税として国に申請できる事業なのか、あるいは他のかたちで交付金を獲得できる事業なのかを考えていくのでしょうか。
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菅野:そうですね。私が職員に伝えているのは、やろうと思っている事業にニーズはあるのか、そのニーズの主語は職員や役場ではなく、住民であるかどうかは大切にしてほしいということです。だから「予算6原則」を職員に意識してもらっています。(*サムネイル画像参照)この6つを満たしていればデジ田の審査も通る確率は高いんです。

クレイ:ことし4月からは「かせぐ課」も設置すると聞きました。

菅野:たとえば、西川町の町立病院はいま厳しい経営状況にあります。病院を診療所へ縮小することも選択肢に入るかもしれない。でも、そうすることで人口流出につながってしまった他の自治体の事例があります。西川町は病院を存続させると決めました。
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こういった地域課題に対応していけるように、来春に、町の歳入を上げることに取り組む「かせぐ課」開設に向けて準備を進めています。サウナや観光資源を活かして町の活性化を図りたいんです。

クレイ:他にも大きな地域課題のひとつである除雪を、困りごとを抱えた地域と、そのお手伝いの報酬で旅をする人のマッチングをする「おてつたび」のサービスを使って除雪要員を集めたり、NFTを使った「西川町デジタル住民票」を採用したりと、様々なことを採り入れていますね。

菅野:除雪要員は総務省の「地域おこし協力隊インターン制度」を財源にして呼び込みました。デジタル住民票はその売上が収益になることもそうなのですが、西川町と関わりたい人が可視化されたことが大きいと思います。どちらも、それまで西川町と縁のなかった人が町の関係者になっています。

内閣府の調査では、東京圏在住の20代の声として45%くらいが地方移住に関心があると答えています。人口密度が低く自然が豊かであること、そして、いまはテレワーク環境があれば地方でも働けるからです。そこで「西川町産業振興複合施設」の中に、キッズコーナーやシェアキッチン、コインランドリーとともにコワーキングスペースやテレワークのブースを設ける計画を進めています。

町の外の若い人との関係を築くことで、その人たちの中から西川町に住みたいと思ってもらえるよう、町づくりを進めています。

クレイ:企業版ふるさと納税の新しい可能性だけでなく、デジタルをフル活用した地方創生を知ることができてとても興味深かったです。


かんの・だいし◎1978年生まれ。2001年、早稲田大学卒業後、財務省東北財務局へ入局。2006年、金融庁監督局銀行第一課。2008年、財務省東北財務局金融監督第一課。2018年、金融庁総合政策局地域課題解決支援チーム。2019年、金融庁監督局総務課地域課題解決支援室。2021年、内閣官房まちひとしごと創生本部事務局。2022年、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局。2022年4月、山形県西川町町長。

文=児玉也一

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