菅野:コロナ前は70万人弱だったので不可能ではないと思っています。ただ、誰をターゲットにするか、しっかりとマーケティングは行いました。
これまでの西川町はトレッキングやスキー客がメインでしたが、高齢者層が多かったんです。
ターゲットを若者へ変えるため、今年から、スマホを手に町を歩いてクリアを目指すAI謎解きゲーム、そしてアウトドア用品メーカーのモンベルと連携してカヤック・バイク(自転車)・ハイクで月山(がっさん)山頂を目指すスポーツイベントの「Sea to Summit」、そして水沢温泉館にリニューアルしたサウナを打ち出しています。このサウナの水風呂は月山の雪解け水で超軟水なんです。化粧品にも使える良質なもので夏でも13度と冷たいので、水風呂に使わない手はないと考えました。こういった新しい情報を発信することで、これまで西川町のことを知らなかった人を呼び込んでいます。
元官僚が解く「デジ田」交付金の本質
クレイ:西川町の税収は6億8000万円ほどですが事業費はどのようにして充てたのでしょうか。菅野:国や民間からの補助金を充てることで町の負担を軽くしています。
クレイ:なるほど。これまでのキャリアから、どうすれば補助金を獲得できるか、そのノウハウは豊富なのですね。
菅野:内閣府の地方創生推進室、そこからデジタル田園都市国家構想を推進する事務局に在籍していました。だから「デジ田(デジデン)」の交付金についての知識があったんです。
このデジ田交付金は、申請するのにデジタル活用が必須のように思われるかもしれませんがそうではなくて、制度の本質は地方が抱える課題をデジタルで解決するためのソフト事業なんです。うまく活用すればまとまった補助金を得られるので非常に有り難い制度です。西川町ではすでに約9億円を獲得して施策に活かしています。
いま、地方は創意工夫で問題を解決しないとやっていけない時代です。国はチャレンジする自治体は支援しよう、お金を出そうと考えている。ということは、全国1741の自治体が国の補助金を取りあう時代でもあります。首長は地域問題の解決のために、経営資源である職員や予算をどのように使うのか、その経営感覚も求められている。選挙に当選したら任期中、問題を起こさなければ次も当選できる、もうそんな名誉職ではなくて、お金を稼いでチャレンジをしなければならない。そうでなければ首長は務まらない時代だと感じます。
企業版ふるさと納税 寄付額が増えた理由
クレイ:そこで企業版ふるさと納税についてもお話を伺いたいのですが、菅野町長就任によって寄附額が18倍になりました。どのようにして増えたのでしょうか。菅野:理由はいくつかあると思います。ひとつは町のホームページに地域課題をサムネイルのような画像で掲げています。簡単なことですがこの試みは少ないと思います。どの役場もホームページで企業版ふるさと納税の項目を探すと、ただテキスト文書を読まされるような、そういう感じです。それだと取り組みが伝わりづらいですよね。