このニアミスはソーシャルメディアに出回った衝撃的な映像にとらえられており、スホーイに搭乗していたパイロットらからは怒りの声が上がった。
「全く間違っている」と、パイロットの1人は無線で怒鳴った。
グラートとスホーイの間で起きそうになった友軍相撃(味方からの誤射)は、混沌とした戦場では大きなリスクだ。おそらく、ロシアがウクライナに侵攻してから1年10カ月近くにわたって繰り広げられているこの戦争ではなおさらだろう。防空の脅威によって、双方のパイロットはいわば雑草の方へと追いやられている。パイロットは敵に撃墜されるのを回避しようとかなり低空で飛行するため、味方の大砲で撃墜される危険があるのだ。
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— Andrew Perpetua (@AndrewPerpetua) December 14, 2023
「くそ、作動しているのが見える」と返事があった。
パイロットらはロケット砲を見ることができたかもしれないが、ロケットの砲手には地上わずか30mほどを高速で飛行するスホーイが見えなかったらしい。グラートが122mmロケット弾を発射した1秒後に、おそらく機首番号8番のスホーイがロケットの真下を飛んだ。
「グラートが8番機の鼻先に発射したことを知らせろ」とパイロットが無線で怒鳴った。
自軍の航空機と大砲が互いに攻撃することのないよう安全を保つには、常に警戒が必要だ。米軍と同盟軍は、地上部隊の前方に「火力支援調整ライン」という架空の線を引き、それを越えて地上部隊がロケット砲やりゅう弾砲を発射しないようにすることで「衝突回避」させている。
そのラインの内側で活動する航空機、特に近接航空支援を行う攻撃機は、自機が頭上に来たときに大砲の発射を確実に止めるため、多くの場合、地上にいる前線管制官を介して地上部隊と調整しなければならない。
危険な連携だ。米軍や同盟軍が入念に準備した航空作戦センターを設置し、空と地上からの同時攻撃を指揮する航空統制部隊の専門家を訓練しているのには理由があるのだ。
ロシア軍はこれがそれほど得意ではない。アナリストのジャスティン・ブロンクは米シンクタンクの海軍分析センター(CNA)で発表した研究で「(ロシア空軍が)戦争を通してほぼ完全に力を発揮できなかったことのひとつは、戦場にいる自軍部隊への力強い近接航空支援だ」と書いた。
ブロンクが研究でそう指摘したのは春のことだ。その後、ロシア軍が空と地の連携を改善した可能性はある。だが、グラートとスホーイのニアミスを見た限り、そうではなさそうだ。
(forbes.com 原文)