僕が提唱するミニマルライフの目的は「時間と心のゆとり」を増やすことで、幸福度を最大化することです。そのために、どうでもいいことを最小化するライフスキルを伝えていますが、それはあくまで手段。食事をコンビニに頼ったり、掃除をロボットに任せて時短するミニマリストもいますが「時間と心のゆとり」が潤沢で、幸福度が高いという点は共通している。その多くが、意図せず大量消費生活から距離を置く生活をしていることから、今のミニマリストとは、現代の前衛アーティストでありアクティビストだと僕は解釈しています。
斎藤:たまに脱成長というと「すべてを手放さなければいけないのか」と言われますが、そうではありません。食事に例えると、毎日3万円の寿司を食べ続けるような胃もたれする贅沢ではなく、料理家の土井善晴さんが提唱する「一汁一菜」を取り入れるということ。出汁や素材自体の旨味を感じる力を養い、季節の移ろいや自然を身近に感じられるようになる。そして、味覚や嗅覚をはじめとした感性を高めることが可能になります。
気候変動や環境についても、都会で自然と触れ合うことなしに話をするのではなく、身体レベルで自然を美しい、楽しいと感じる必要がある。私は、「一汁一菜」のような脱成長的アプローチをしながら、身体レベルで変化を起こして「資本主義から半身になる」ことも重要ではないか、と(四角)大輔さんを見ながら最近は考えています。
四角:例えば、息子の離乳食に塩を使わないため、僕も塩なしの食事にしてみたんです。数日で味覚が研ぎ澄まされ、食材の味を前より感じるようになった。離乳食が終り、久々に塩をかけたら唸るほど美味しくて塩のありがたみに感激。それ以来、以前の半分以下の塩で満足度は数倍に上がりました。そしてNZ移住直後、家具も人脈もゼロで生活し始めたことで、ベッドや机、友の存在に心底感謝した。このように、物事や人間関係を極限まで減らせば感度と感謝が高まる。それに比例して幸福度も高まる。