暮らし

2023.08.04

これからのビジネスに「コンパッション」が必要なワケ

浜辺にたくさん転がっている海洋ごみの問題。皆さんなら、どのような方法で解決を目指すだろうか。

「ビーチクリーンに参加する」「ゴミを利用したリサイクルプロダクトやアートを作る」「ゴミを捨てないように看板を作って呼びかける」など、できることはたくさんある。実際に私もビーチクリーンに参加したり、海洋ゴミから作ったスニーカーやシャツを愛用している。もちろんこれらも実践的なアクションではあるが、根本的な解決策ではない。

本質的な解決法、それは「ゴミを捨てない精神性を、世界中の人々が身につける」ことであろう。当たり前だと思われるかもしれないが、意外とできていない人がいるから、海洋がゴミで汚染されている。先日、西表島でビーチクリーンを行ったが、とんでもない量のゴミを目の当たりにし、改めて絶望的な気持ちになった。

サステナビリティの現場を見ていると、そうしたゴミをユニークな方法で有効活用しようという取り組みがたくさんある。プロダクトやサービスもたくさんあり、消費者にもそういったものを選ぶことがクールであるという認識も高まっている。
西表島の海岸で拾った大量のゴミ。半日でこの袋3つ分のゴミが集まった。

西表島の海岸で拾った大量のゴミ。半日でこの袋3つ分のゴミが集まった。


ただ、少し過剰になり過ぎている感も否めない。猫も杓子もSDGsやサステナビリティを打ち出し、まるでマーケティングの記号のように、持続可能性の取り組みが扱われるようになった。さらに、環境配慮を謳っておきながら、実はまったく配慮していない「グリーンウォッシュ」なるものも出現し、混沌をきわめている。このままでは、サステナビリティが大量生産大量消費と同じ軸で、資本主義のシステムの一つの形態として利用されてしまう危惧がある。

そのような状況の中、真摯にサステナビリティに取り組むのであれば、提示するサービスやプロジェクトが、本当に芯をくったものなのか、ということを真剣に考える必要がある。その精神性を養うのに役に立つのが「コンパッション」だ。

「コンパッション」は、生きとし生けるものの幸せを願う気持ち、人や物事、社会、地球にやさしく寄り添うあたたかい心のことをいう。日本語では「慈悲」と訳される。これはサステナビリティはもちろん、人々のウェルビーイング、ひいては生きる上でも欠かせない心持ちといえる。
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文・写真=国府田 淳

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