欧州

2023.12.17 12:00

アウジーイウカ攻防は「ドローン戦」に ロ軍、中隊を2日で35回攻撃

第53旅団の陣地を狙うFPVドローンの大半は、兵士らがいる場所の近くに突っ込むものの、彼らが負傷するほどの近さではないという。だが、それも変わるかもしれない。ロシア側は500ドル(約7万1000円)ほどのFPVドローンをさらに多く製造し、前線に配備しているからだ。戦域によっては、ロシア側はウクライナ側の数倍のFPVドローンを保有している。

ザムは、第53旅団がドローン戦への対応に苦慮していることを認めている。所属する大隊には専属のドローンチームがあるものの、自身が率いる中隊専属のドローンチームはない。民間人の志願者が短期間、中隊専用のドローンで支援してくれていたが、のちに前線を離れた。空からの監視にできた穴を埋めるため、下士官のひとりが監視用にDJI製のドローン「Mavic」を要望し、手に入れることができたという。

このMavicは、ザムの中隊がロシア側の攻撃ルートを監視するのに役立っている。しかし、代えのきかない監視ドローン1機で、何十機、あるいは何百機という自爆ドローンに対処しなくてはならないのが実情だ。

もちろん、ウクライナ側もFPVドローンを保有していないわけではない。アウジーイウカ守備隊は、少なくとも5つの独立ドローンチームに支援されている。それでも、ロシア側による空からの攻撃に圧倒される危険が常につきまとっている。

明白な解決策がある。「電子戦がもっと必要です」とザムは訴えている。具体的な装備で言えば、電波妨害(ジャミング)装置のことだ。ロシアがウクライナで拡大した戦争では、双方が相手のドローンを飛べなくするために電波妨害装置を用いている。

12月上旬には、ウクライナ側がアウジーイウカで、ロシア側のドローンの大群を封じ込めながら、一時的にせよ、自軍のドローン運用者に空域を支配する機会を与えるのに十分な電波妨害装置を、ようやく配備しつつある兆候があった。

もっとも、もしウクライナ側が電波妨害面でこうした優勢を確保できているとしても、それをどのくらい保てるのかは不透明だろう。

アウジーイウカの空をめぐる戦いが激しくなっている。味方のドローンを飛ばし続け、敵のドローンを飛べなくした側が、地上で圧倒的に有利になる可能性が高い。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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