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2023.12.18 08:00

「産地ブランドで終わらせない」新潟・燕三条の次世代につなぐ挑戦

「燕三条 工場の祭典」の全体監修を務める堅田佳一(真ん中)をはじめとするクリエイティブチームのメンバー

工場の祭典に第1回目から参加している玉川堂。「燕三条のことを知ってくれた人たちが一気に増え、企業も見せ方を意識するようになりました。次の10年は、世界から人が集まる産業観光都市を目指して、それぞれの企業価値をどうやって端的にアピールしていくかが大事になってくると思います。外国人に伝えるというのも企業の技術の一つです」と玉川社長は語る。

祭典期間以外も工場見学ができる玉川堂では、外国人観光客向けにカナダ人の営業担当が英語で説明を行うほか、若手職人が自らの技術を英語で説明できるように毎週勉強会を開く。世界から人々が訪れるまちを目指し、着々と準備を進めている。

魅せるにこだわる「藤次郎」 見ることで伝わる価値

次は包丁にこだわる人なら誰もが知っている包丁メーカーの「藤次郎」だ。藤次郎でも通年で工場見学ができる。エントランスの建物に入ると、藤次郎が農機具メーカーから包丁メーカーになるまでの歴史や年表、実物の隣に説明書きがあったりと、まるで資料館のよう。


しかし、最初からオープンファクトリーに積極的というわけではなかった。藤田進社長は「技術が集約されているので、工場は見せるものじゃないと思っていました。ただ包丁って見た目では高いか安いか価値が伝わらないじゃないですか。実際の制作工程を見てもらうことで、価値を理解してもらうことができるんですよね」とオープンファクトリーに可能性を感じたという。
藤次郎の藤田進社長

藤次郎の藤田進社長

以前は卸を通し全国の量販店などで販売していたため、顧客の顔が見えない状態だった。そこから見学ができるように工場を改装。エントランスやナイフギャラリー、ナイフアトリエを新設し、職人と顧客がつながる場所へと変化した。
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オープンファクトリーを始めて以来、1枚の金属板でできたデザイン性と使い安さを兼ね備えた包丁「ORIGAMI」などの自社ブランドを立ち上げたり、東京に店舗を構えたりと直販に力を入れている。ブランディングや、研ぎ直しなどのアフターケアにも注力したことで、顧客一人あたりの平均単価は2倍になったという。
藤次郎の藤田進社長(右)と工場の祭典の全体監修を務めるクリエイティブデザイ ナー堅田佳一

藤次郎の藤田進社長(右)と工場の祭典の全体監修を務めるクリエイティブディレクターの堅田佳一

カトラリー製造の「燕物産」が祭典に初参加した理由


藤次郎はデザイナーの堅田が、ものづくりの生産現場を間近で学びたいと、大阪のデザイン事務所を飛び出しプロダクトデザイナーとして転職した場所でもある。藤次郎のブランディングや「ORIGAMI」をはじめとする商品開発、エントランスなどのオープンファクトリー施設のディレクションを行ってきた。藤田社長は「見せ方を工夫することでわたしたちが大切にしていることが伝わり、お客さんに価値を理解してもらいやすくなる。堅田くんとともにオープンファクトリーや自社製品の開発に力を入れてきたこの数年で、会社は大きく変わりましたね」とほほえむ。

これからの10年について聞くと、「まだまだこれから!全国そして世界から観光客にきてもらえるようなまちにするために、やることはたくさんあります。産業観光でどんどん燕三条を盛り上げていきたいですね」と話し、熱い心意気を感じた。

「このままじゃまずい」と危機感を抱いた息子が社長である父親の背中を押し、今回オープンファクトリーに初挑戦したのはカトラリー製造の燕物産だ。
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文=川上みなみ 編集=督あかり

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