日本のユースの声を集め政策につなげる次世代のリーダーが描く未来とは。
2020年8月、Twitterで全国の若者たちを巻き込んだ活動は大きなうねりとなり、ジェンダー平等な社会の実現に向けた国の「第5次男女共同参画基本計画」に彼らの声を反映させた。推進役は「#男女共同参画ってなんですか」の代表・櫻井彩乃。彼女が今注力しているのが、若者の育成だ。22年3月、ジェンダー課題を包括的に学ぶサードプレイス「ジェンカレ」を立ち上げた。
きっかけは、「#男女共同参画」に届いた1050件の若者たちの声。「ジェンダーのことを話したら、過激な人と言われた」「女は、大学へ行かなくていいと言われた」といった切実な悩みに、櫻井は耳を傾けた。見えてきたのは、彼らの抱える問題―「自分の考えを共有できる仲間」がいないことだった。本や学校では深く学べないジェンダー問題を、仲間と共に学び、共に行動を起こすための居場所づくりを思いつく。「若者のモヤモヤした気持ちを受け止める場所があればいいなと思ったんです」
違和感こそ自分らしく生きるための出発点
「女なんだから、黙ってかわいくしてればいいんだよ」。高校2年の時に男子同級生に言われた一言に衝撃を受けた。性別によって人生が決められることへの強い違和感が、櫻井をジェンダー問題へと突き動かした。大学2年で葛飾区の男女共同推進審議委員に参画。20年、男女共同参画に続いて、選択的夫婦別姓の導入を求めたオンライン署名活動を実施。内閣府男女共同参画推進連携会議の有識者議員に選出され、若者の声を代弁する。政策提言にかかわるなかで、気づいたことが「社会で声を上げられない人の声をすくい上げる必要性」。それには「政治の場に入っていく人をもっと増やさないといけない」。人と政治を結ぶ橋渡し役となる若者の育成、そして、切実な問題を抱える地方の若者の支援、このふたつを、ジェンカレの目標に据えた。
15歳から29歳までの若者たちが国内外からジェンカレに参加する。「どんな自分や社会にしたい、どうやって実現する?」をテーマにロードマップを作成。それを実践するための基礎力を、政治、経済、歴史といった各分野のフロントランナーがオンラインで養成する。論理的にかつ熱く語れる、そんな若者を増やす。
卒業した1期生31人は、地域の男女共同参画センターと連携して企画を組んだり、地方の高校でジェンダー講座の導入を推進したりと、活動を続けている。全国に卒業生が散らばることで、ジェンダーに対する世の中の意識が好転することに、櫻井は期待を込める。
「さまざまなステークホルダーに散らばった卒業生が協力し合って、社会を動かす力になる。10年後にそんな時が来る、って信じています」
ベスト50600円、トップス17600円、パンツ28600円(すべてチョノ/ネクトデザインTel:046-876-6403)イヤリング4290円、ネックレス4400円(ともにkiku製作所 https://kikuseisakujo. jimdofree.com)
さくらい・あやの◎GENCOURAGE(ジェンカレ)代表。1995年生まれ。高校生の時に同級生に言われた一言がきっかけで、ジェンダー平等実現を目指す。〈#男女共同参画ってなんですか〉の代表を務め、選択的夫婦別姓の導入を求めたオンライン署名運動は5日間で3万筆超を集めた。