山野:基本的に世の中に出てくる情報ってメディアが出せる情報、出してもいい情報ですよね。取材では赤裸々にドロドロに生々しい話をしても、ここは書かないでくださいとなるわけで。
世の中の成功ストーリーを知ってても再現性はない。その背後にある生々しい失敗事例がすごく参考になるので、私の運営するオンラインプラットフォームの元々のコンセプトは、どんな事例も密室で情報交換できる、そんな場所を作ることでした。
特に同族企業のアトツギって絶対外に出せない家族の問題とか、葛藤を抱えているので。それを解決する場所、手札を持っておく。失敗事例を学べる場はテクノロジーの進化と共に増えていますよね。
「知らないことを知らない」と言えるか。本当に寄り添っているのか?
小林:私は若い人たちの動き方をいいなと思うことも多いです。経験者は変にビジネスかぶれしてしまっているというか、会社に入ってビジネスのモデルはこうやって作りゃいいんでしょ思ってる人ほど、データで全てを済ませようとする傾向が強いんですよね山野:わかります。だから私は若い人に期待しています。だいぶ歳をとってから仕事を辞めて、満を辞して家業に戻った人って失敗できない感がすごい。
小林:そういう時に脇目もふらずに現場に飛び込める人、新しいことやるときにまずは話を聞きに行ける人。難しいことは何もなくて、そういった基本のきの部分で明らかに差が出ると思います。
山野:知らないことを知らないと言うことを恥ずかしいと思わない人って意外と少ないんだなと思います。
小林:私はいつも「あなたの会社のことを知らないので教えてください」とまず言います。コンサルなのにそんなことも知らないの?と言われるのが怖くて聞けないという話も聞きますが、私は全くそんなことはありません(笑)逆に検索すれば何でも分かる時代だからこそ、現場や当事者のお話からしか見えないものがあると思っています。「知らないことを知らないと言う」というのは、インキュベーションというテーマでは大切だと思います。
粟生:名古屋ってスタートアップが生まれない保守的な都市だと言われていたんですが、2020年に内閣府からスタートアップ・エコシステム拠点都市に入れてもらったおかげで、実際にスタートアップが盛り上がってきて、お金も集まってきて、土壌はあるんです。
ですが、実際にはインキュベーターやアクセラレーターとか、いわゆる事業を作る人を応援する人ばかりが増えちゃって、事業をやる人が増えていない。応援する側の人が、口出しやお金を出すだけじゃなく、手も動かしてほしいという期待感もあります。
だからサポーターの人たちもチャレンジしてみたらということを最近言っています。誰しもが起業するのがいいというわけではなくて、例えば地銀のベンチャー担当者は現場に出向してみるとか、大企業で新規事業やってるならベンチャーに出向してみるとか、人材の流動性を高めることを意識的にやるべきだと提言しています。組織マネジメントや、教育、カルチャーの課題解決のために「他人の窯の飯を食べに行かせる」ことが、大事な時代になってきていると思います。
全3回の「インキュベーション女子会」いかがでしたか? 「Z世代はこうだから」「今の若い人は......」こんなセリフを耳にすることがありますが、働き方改革や人材の流動性が求められるなかで、世代間の違いを言い訳にした旧来のマネジメントは通用しないでしょう。時代とともに、インキュベーター自身も起業支援やビジネス創出支援にとどまらず、アトツギや会社員、さらに次世代を担う子どもたちのニーズと向き合う仕事に変化していることも印象的でした。組織が抱える課題や三賢人に相談したいことなどがありましたら、ぜひこちらのフォームにお寄せください。感想もお待ちしております!(督)
<インキュベーション女子会>シリーズ
#1「ここがもったいない」企業支援の裏話#2 リーダーの壁「人材育成どうすればいい?」
#3 アトツギや経営者へ告ぐ「十分迷走してください」