強力な電気パルスによる遺伝子導入は、遺伝子工学において確立された技術であることを考慮した飯田助教と共同研究者たちは、デンキウナギが水中環境において生きた遺伝子導入メカニズムとして機能する可能性があることを提案した。
この仮説を検証するために、飯田助教と共同研究者たちは、実験室で育てたゼブラフィッシュの幼魚を、緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子マーカーと一緒にDNA溶液に入れた。次に、彼らはデンキウナギを囲いに入れ、餌に食いつかせることで電気を放電させた(図1)。もしその結果、ゼブラフィッシュの幼生細胞がDNAを取り込んだならば、ゼブラフィッシュは緑色に光ることになる。
図1:デンキウナギからゼブラフィッシュ幼魚へのEOD(Electric Organ Discharge、電気器官放電)暴露。(A)受容生物を電気ウナギの電気器官放電(EOD)に暴露するために使用された実験水槽。水槽内には三本の炭素棒電極が設置されている:二つの入力(黒と赤色で表示)と一つの接地電極(緑色で表示)。(B)金魚を捕食する際にデンキウナギから発生されるEOD。ゼブラフィッシュ幼魚とDNA溶液を含む容器は、デンキウナギによって生成される高電圧パルスに近い位置に設置する。マゼンタ色の曲線は電気ウナギによって生成される電場を示す。(C)メダカのactbプロモーターによって駆動される緑色蛍光タンパク質(GFP)発現プラスミドの構成。(D)1〜8細胞期にプラスミドをマイクロインジェクションされた受精7日後のゼブラフィッシュ(Danio rerio)幼魚の写真。プラスミドは顕著で広範囲なGFP蛍光を引き起こし、顕著な発達異常はない。スケールバーは500µm。(E) デンキウナギによる捕食行動と30秒間続くEODパルスの例が示されている。デンキウナギは最初に金魚を噛んで飲み込む(マゼンタ色の矢印、1回目の噛みつき)、次に空のクリップを噛む(青色の矢印、2回目の噛みつき)。(doi:10.7717/peerj.16596、CC BY 4.0)