「デンキウナギの放電は、通常エレクトロポレーションに使用される機械とはパルスの形状が異なり、電圧も不安定ですが、デンキウナギ自身の放電が細胞への遺伝子導入を促進したことを示しています」と飯田助教は説明した。「デンキウナギや発電する他の生物が、自然界の遺伝子組み換えに影響を与える可能性があるのです」。
このような現象が自然界で観察されたのは今回が初めてではない。たとえば、落雷は線虫や土壌細菌の遺伝子を変化させることが以前発見されている(参考文献)。
この研究は実験室の条件下で行われたが、生きた魚が使用されており、デンキウナギによって生み出される電気放電が野生で生きた魚の幼生にDNA転移を引き起こし、それによって種の進化の軌跡を(潜在的に)変える可能性があることを示唆している。
しかし、自然環境で実際にこうしたことが起きるのだろうか?
飯田助教と共同研究者たちは、今回の発見だけでは、放電が自然環境において遺伝的要因として作用すると断定はできないと認識しているが、彼らの研究は、放電を介した遺伝子導入が自然の生息環境で起こりうることを示唆しており、今回の一連の実験は、この現象に関する今後の研究の道しるべとなる。
研究者は言う。「私はこのような『思いもよらぬ』『突拍子もない』着想から新しい生物現象を発見しようとする試みが、世の中に生き物の奥深さを啓発し、将来のブレイクスルーのきっかけになると信じています」。
情報ソース:
榊晋太郎、伊藤零雄、阿部秀樹、木下政人、本道栄一、飯田敦夫(2023)。Electric organ discharge from electric eel facilitates DNA transformation into teleost larvae in laboratory conditions, PeerJ 11:e16596 | doi:10.7717/peerj.16596
(forbes.com 原文)