この秋、南部でのウクライナ軍による反攻が鈍ると、ロシア軍は初冬の恒例になりつつある東部での攻勢のために兵力を集中させた。ロシア軍の数個旅団が、ドネツク市のすぐ北西に位置し、ウクライナ軍の防御拠点であるアウジーイウカに対する攻撃を始めた。
2カ月におよぶアウジーイウカの戦いで、ロシア軍は大きな犠牲を出している。これまでに数百両の車両を失い、人員も数千人以上失った可能性がある。一方、ウクライナ軍の守備隊の損耗ははるかに小さい。
だが、ロシア側が何千人もの命を犠牲にするのをいとわず、ウクライナ側はそうするわけにはいかない限り、ロシア軍の「人海戦術」は功を奏することになる。昨年、東部ルハンスク州セベロドネツクで、あるいは今春、ドネツク州バフムートでしたように、ウクライナ軍の指揮官はどこかの時点で、廃墟と化しているアウジーイウカを保持するに値しないと判断するかもしれない。
いまはその時点ではない。アウジーイウカはもともと第110独立機械化旅団などが守ってきたが、ウクライナ軍は第1戦車旅団や、西側製のハイテク装備を運用する第47独立機械化旅団など、数個旅団の大隊を増援に送り込んだ。アウジーイウカの北とみられる場所でT-72B3と対決したT-64は、第1戦車旅団の戦車だった可能性がある。
もしそうだったとすれば、ウクライナが西側製戦車(ドイツ製のレオパルト1やレオパルト2、英国製のチャレンジャー2、米国製のM1エイブラムスなど)を何百両と受け取っているにもかかわらず、ウクライナ軍最高の戦車旅団はいまだに古い戦車を使用していることが確認されたことになる。
ロシアが戦争を拡大した2022年2月時点で、第1戦車旅団は、現代的な光学機器や衛星ナビゲーション、新型の無線装置などを備えたT-64BV Obr. 2017型を中心に、T-64を100両かそこら保有していた。
ウクライナのハルキウ戦車工場はその後、チェコのパートナー企業と緊密に連携して、ウクライナ軍のT-64BVを、光学機器や無線装置をさらに改良したより新しいObr. 2022型に更新してきた。その数は数百両に達する可能性もある。
第1戦車旅団は、改良された光学機器やデジタルシステムがない、2017型以前のオリジナル型数両を含め、いくつかのモデルのT-64BVを組み合わせて使っているもようだ。ウクライナ軍の領土防衛旅団がロシア軍からの鹵獲品のT-62戦車を使い続ける限り、重量42t、乗員3人のT-64をウクライナ軍で最低の戦車と呼ぶわけにはいかない。もちろん、ウクライナ軍で最高の戦車というわけでもない。
とはいえ、第1戦車旅団にとってT-64はよく知った戦車であり、戦術を編み出したり兵站を整えたりしてきた相棒だ。そしてT-64は、少なくとも、より新しいT-72B3との一騎打ちでは、互角に渡り合えることを示してみせた。
(forbes.com 原文)