激しい砲撃に続いて行われたこの攻撃は、明らかに「固定(フィクシング)作戦」だった。ロシア軍はこの攻撃を通じて、ほかの前線で戦っているウクライナ軍の旅団を引き剥がし、こちらに張り付けることを目論んだのだ。
だが、これまでロシア側の狙いどおりにはなっていない。「ウクライナ当局は、アウジーイウカへの攻勢はロシア側による固定作戦だと認識しており、この軸に過剰な兵力を投入する公算は小さい」ワシントンD.C.にある戦争研究所(ISW)は早くも11日時点でそう分析している。
現に、ウクライナ軍によるアウジーイウカへの比較的大きな増援は、確認できるものでは第47独立機械化旅団の1個もしくは2個大隊だけだ。第47旅団は最近まで、南部ザポリージャ州のメリトポリに向かう軸の反転攻勢を主導していた部隊である。
つまり、アウジーイウカにいるウクライナ軍の数個旅団は現存の兵力で、より大きな兵力のロシア軍部隊による連続攻撃に持ちこたえねばならなかった。この町の北面に配置された第110独立機械化旅団は、そうした旅団の1つだった。
2000人規模の第110旅団はウクライナ軍で最も経験豊富な部隊というわけでもなければ、最も装備の充実した部隊でもない。だが、この旅団は現時点で、ウクライナの戦争努力において最も過酷で最も重要な仕事をしていると言っても過言ではない。1000km近くにおよぶウクライナの前線からほかの旅団を引き離させずにアウジーイウカを死守することで、ウクライナ軍が南部と東部で始めて5カ月近くたつ反転攻勢を停止せずに済むようにしているからだ。
「第110機械化旅団の英雄的な戦いぶりは言葉では言い表せない」ウクライナのジャーナリスト、ユーリー・ブトゥーソウはそう記している。
塹壕に配された第110旅団の兵士たちは、対戦車ミサイルや対空ミサイルを撃ち込んだり、24時間運用しているドローン(無人機)から爆弾を落としたり、あるいは近傍の第55独立砲兵旅団から支援射撃を受けたりしながら、ブトゥーソウによると13日間でロシア軍の装甲車両を200両以上破壊し、兵士800人以上を殺害した。
「途方もない数だ。何百もの死体が農地や野原に転がっている」とブトゥーソウは書いている。