無理しないリサイクル、新しい視点の循環を目指す

プレスリリースより

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印刷所から出た印刷済みの廃紙をそのまま名刺にしたり、古着のTシャツを抗菌防臭加工など少しだけ手を加えるなど、捨てられたものをほぼそのまま再利用する、新しいリサイクルのアイデアが、「第63回 富山県デザイン展」のデザイン賞を受賞した。

再生紙は通常、古紙を溶かしてパルプに戻し、漂白してから再び製紙するという工程をたどるが、そこでは大量の水や薬品やエネルギーが使われる。その紙に「〇〇%の再生紙を使用しています〜」とメッセージを書くよりも「もともと印刷されていた気配をあえて残す」ことで資源の循環を意識できるようにした、というのがこの再利用方法を考えた企画デザイナー、アートディレクターであり、富山県高岡市でクリエイティブスタジオROLE(ロール)を運営する羽田純氏。

印刷所では、印刷の試し刷りに使った紙や印刷ミスのある紙、いわゆる損紙(ヤレ)が出る。印刷には使えないので廃棄されるか再生紙にされるのだが、それをあえて再生せず、印刷面に新しい内容を「上書き」する方法を羽田氏は考案した。しかし、商業印刷物は版権の問題などがあり実現が難しかった。そこで、富山県高岡市が、市の刊行物なら問題ないとこれを採用し、職員の名刺や封筒を作った。そこに、市で発行した印刷物を市が再利用するという好循環が生まれた。

また羽田氏は、古着に抗菌や防臭などの加工を施して「新しい古着」として販売するプロジェクト「ROLE YOURS」を、東京のアパレルメーカー、オールユアーズと立ち上げた。オールユアーズは以前から古着の回収に取り組んでいたが、昨年、JR東日本のグループ会社と共同で、駅を利用して約300トンの古着を回収した際、まだ着られるものの有効利用方法をROLEと考えた。これは「リサイクルともアップサイクルとも少し違う、新しい視点の循環を作る実証実験」とのこと。

通常、抗菌や防臭加工は新しい生地に施すものだが、それを古着に行うという前例のない処理を導入。さらに、赤ちゃんの肌着をヒントに、Tシャツを裏返して縫い目が肌に当たらないようにして、表にロゴマークを付けた。これは、「ウラオモテを間違えてる、という常識をひっくり返すことで生まれた新しい視点」とのこと。「足してるようで足してない、作っているようで作っていない服」なのだそうだ。

4児の父である羽田氏は、子どもたちが大人になったときの環境を憂慮し、これらのアクションを起こした。手の届く範囲から誰にでもできる「楽しく伝わりやすい環境行動」を提唱している。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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