話し言葉には「間」がない
大人の学習者にとっても、赤ちゃんにとっても、話し言葉を理解する上での最大の課題のひとつは、話し言葉には「スペースがない」ということです。文章を書くとき、多くの言語では単語と単語の間にスペースを入れて、どこで止まって次の単語が始まるかを区切ります。初級学習者だとこの”間”を探しながら聞いているのですが、それがないのです。
たとえば以下の英語(意味:「この例文は私たちがどのように言語を認知するかを表しています」)は
This example sentence represents how we perceive expressive language.
話し言葉だと、こんな感じになります。
thisexamplesentencerepresentshowweperceiveexpressivelanguage.
"Understanding expressive language is no easy feat. "(意味:「言語を理解するのは簡単ではありません」)を音声にすると下の画像のようになります。どうでしょう、文字や音の差異がちっとも明確ではありません。いったい単語の境界線はどこにあるのでしょう? これが、実際には7つの単語からなる文章だと信じられますか?
左から右へと、長い線と短い線が連なっているように見えます。波形の、ある部分には非常に長い線がたくさんあり、ある部分には非常に短い線がありますが、線がまったくない場所(無音)はほとんどありません。
母国語では、この”問題”は乳幼児の頃に自然と解決してきました。しかし、大人になってからの学習者は「読むこと」に依存するようになり、個々の単語/一つ一つの単語を知りたい(練習したい)と思うようになります。だから、話し言葉にスペースがないと混乱するのです。
私たちは、自分たちにとっての新しい言語がすごいスピードで話されるとか、息をつかずに発話されているように感じますが、実はそれは、「その言語の境界」を見つける訓練を十分に積んでいないからにすぎないのです。