クリエイターをどう育てる? 日本のエンタメビジネスの未来

千木良:それでも、インフルエンサーを圧倒する職人は必ずいるはずで。例えば音楽業界では、作詞・作曲ができるシンガーソングライターが見つかりやすく注目されてきましたが、作曲だけを突き詰めている人が作曲にかけている時間は、ほかのことにも時間を割いている人より長い。そういった方々が集まれば世界で戦えるコンテンツが生まれるだろうなと思います。

そんな専門職の才能を見つけやすくするために、クラウドナインでは9月にSHOWBIZというプラットフォームをリリースしました。SHOWBIZは「タイアップの解放」がコンセプトで、アーティストは人気アニメやキャラクターと自由にコラボし、タイアップ曲をApple MusicやSpotifyで配信することができる仕組みです。

現在、「少年ジャンプ+」の漫画『幼稚園WARS』のタイアップソング募集のプロジェクトなどが動いています。

これには3つの狙いがありまして。1つ目は収益分配。クリエイターに入る印税が少ないという業界の慣例から脱して、適切に分配できるようにすること。

2つ目はクリエイター同士のマッチング。歌い手や作詞家など一部のパートを制作しているクリエイターは、他のクリエイターが投稿した素材を使用することができ、専門的な才能を生かすことができます。

3つ目はアーティストが公平に選ばれるようにすること。「誰が歌っているか」ではなく、「何を歌っているか」でタイアップ曲が選ばれるようにしたいんです。

:二次創作が公に「OKだよ」と言われているのがSHOWBIZの大きな特徴ですよね。タイアップ曲の配信で得た収益が、原作者にも還元される仕組みになっているのも新しいですよね。

千木良:これまでの音楽業界では、音楽そのものを作った人ではなくリスクをおった事務所やレコード会社、宣伝した出版会社に多くの印税が流れる仕組みでした。

スタジオではなくPCで音楽が作れるようになった事で金銭的リスクは減り、SNSが発展し続け、自身で宣伝も出来るようになった今、アーティスト、編曲者、作詞家、作曲家、ミックスエンジニアそしてタイアップ先の漫画家さんなどにも収益が入るような仕組みが必要だと考えています。令和のエンタメは誰のおかげで売れているのか、再定義する時が来ています。



渡辺裕介◎1984年生まれ。2008年に博報堂に入社。様々なメディアでコンテンツの企画プロデュース、コンテンツを活用したプロモーションの企画プロデュースに携わる。これからの時代にふさわしい新たなコンテンツカンパニーをつくるべく、2017年にCHOCOLATE Inc.を創業。

千木良卓也◎1984年生まれ。2014年に音楽業界に参入。同年ハイスピードボーイズに入社しGReeeeNのマネージャーを4年間務める。その後1年間フリーのプロデューサーを経験し2019年にクラウドナインを創業。

林士平◎1982年生まれ。2006年に集英社に入社。月刊少年ジャンプに配属され、漫画編集者となる。入社後1年で月刊少年漫画誌『ジャンプSQ』の創刊編集の一人となる。2022年ミックスグリーンを創業。また、ジャンプ+の編集者として『チェンソーマン』『SPY×FAMILY』などを担当。

文=堤美佳子 取材・編集=田中友梨 撮影=平岩亨

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