クリエイターをどう育てる? 日本のエンタメビジネスの未来

難しいのが、無理やり世界に向けた作品を作るとヒットしないということ。例えば、韓国映画『パラサイト 半地下の家族』は、韓国文化を下敷きに世界に届くアートワークで打ち出したから全世界でヒットした。自分たちの目に見えている範囲で面白いと思うものを、ある程度世界レベルを意識した表現に切り替えていくことが重要ですね。

なお、世界が気にする“NGライン”は流動的です。例えば『SPY×FAMILY』には架空の戦争が出てくるのですが、アニメ化の際に世界情勢を鑑みて原作から表現を変えなければならないこともありました。常に議論しながら作品をつくる必要があります。

『SPY×FAMILY』。2019年から「少年ジャンプ+」で連載中の、遠藤達哉によるスパイコメディ

千木良:アーティストやクリエイターには、職人タイプとインフルエンサータイプがいると思っています。インフルエンサータイプは、SNSでの楽曲の出し方や自分のプライベートの伝え方が上手く、音楽についてもしっかり語れる、とにかく自分の切り取り方や発信の仕方が上手い方。一方で職人は、そういうことは下手だけれど、作曲、ギター、歌などのひとつのことに対して脇目も振らずに没頭出来る方。

職人タイプは、ものすごく偏ったインプットをして、ものすごく偏ったアウトプットをする人が多いのですが、そのほうが独自性を出しやすい。AIとも同じ土俵にならないんですよね。私たちの仕事にはそのような職人も見つけ、育て、不得手な事を全て代わりに行うことも含まれるのですが、世の中にはその才能が見つかりにくいのでもっと職人タイプが世に出られるような場を作っていきたいです。

職人が活躍できる場をどう作る?

渡辺:職人タイプ、つまり「作画は得意だけど……」「曲は作れるけど……」という特定の領域に特化した才能を持っている人たちは、完成形を作れないから世に出せない。そういう人たちを見出しやすくしていくのは、日本のエンタメがさらに発展していく上で大切なことだと思っています。
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文=堤美佳子 取材・編集=田中友梨 撮影=平岩亨

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