吉川:韓国の暗号資産市場について、他国と比較してユニークな点はありますか?
キム:韓国には、以下の2つの顕著な特徴があると思います。まずは、「キムチプレミアム」と言われる、グローバルな価格よりも韓国内で暗号資産の価格が高くなる現象が頻出することです。これは取引環境が孤立していることから発生しており、21年にはこのプレミアムが40%まで上昇したこともあったほどです。もう一つは、韓国市場のビットコイン取引量が全体の約6%しか占めておらず、残りの94%はアルトコイン(ビットコイン以外の暗号資産の総称)が占める点です。グローバル市場ではビットコインが40%を占めることを考えると、これは非常に対照的です。また、韓国では多数の暗号資産トレーダーがいるだけでなく、一人当たりの取引量と暗号資産保有量が世界で最も高い国の一つでもあります。
グローバルWeb3プレイヤーが韓国でオンラインコミュニティを設立する際、コミュニティの参加者は通常500〜2000人の範囲であることが多いです。たいした数字ではないと一蹴する人もいるかもしれませんが、じつはそうではありません。あるグローバルプロジェクトでは、韓国コミュニティのたった5人のメンバーが、30000人もメンバーがいる世界的なコミュニティよりも高い取引量を発生させたケースもあります。韓国の有名なことわざに「小さな唐辛子が一番辛い」というのがあります。まさに韓国のコミュニティを適切に表しているといえるでしょう。
吉川:韓国政府の暗号資産に対するスタンスはいかがでしょうか?
キム:17年〜18年頃、韓国におけるブロックチェーンや暗号資産への政府のスタンスは一般的にネガティブなものでした。当時、「ICO(Initial Coin Offering)」は“タブー”であると見なされていました。18年1月には、当時の法務部長官のPark Sang-ki(朴相基)がすべての国内の暗号資産取引所を閉鎖させることを検討中という声明を出したことが引き金となって、その後3日間で世界の暗号資産時価総額が30%も大暴落したほど、韓国市場の影響は大きくなっていました。このネガティブな政治情勢の主な理由は、海外のICOを通しての行き過ぎた投資、価格操作、マネー・ローンダリング(資金洗浄)、外国為替流出などです。
しかし時が経ち、違法行為が減るとともに、多くの政治家がより中立的なスタンスをとるようになってきました。韓国は民主主義国なので、暗号資産に対する政治のスタンスは右派であれ、左派であれ変化します。政党よりも地方政府の暗号資産に対するスタンスを理解することのほうが、韓国でビジネスをするうえで役に立ちます。例えば、三大都市のソウルや仁川、釜山、そして済州島は暗号資産に友好的な代表的な都市です。