暗号資産

2023.11.28 17:30

韓国のWeb3業界最前線! なぜ韓国では暗号資産投資熱が高いのか?

井関 庸介
4330

吉川:韓国で暗号資産の取引がここまで活発になった経緯や理由とは?

キム:暗号資産は17年に韓国で大きな話題となりました。17年6月にビットコイン (BTC)やイーサリアム(ETH)の価格が上昇したことで、メディアがブロックチェーンや暗号資産について連日大きく取り上げ、それがその後の一般投資家向けの市場の基盤となりました。同年12月に韓国のUpbitという取引所が世界最高の取引量を記録し、韓国の暗号資産に対する爆発的な関心を証明しました。その背後には2つの社会文化的な要因があると思います。

1つ目は、韓国の急速な経済成長が国民に競争的なマインドセットを植え付けてきたことです。これは学術や職業の世界だけでなく、投資行動でも顕著です。「빨리 빨리」(急げ、急げ)文化」と、強い集団メンタリティは、個人が仲間の間で流行っている投資トレンドや成功に追従しようとする行動をしばしば引き起こします。近年の経済停滞や雇用不安もあって多くの韓国人がより安定した将来を確保するため、多様な投資手法を模索するようになり、このような動機は強まっています。定職からの収入だけでは生活水準を維持・向上できないという現実のもと、暗号資産への投資は魅力的なオプションとなってきています。

2つ目は、高騰する不動産価格です。韓国人の生活にとって最も重要な側面は「의식주(衣食住)」です。その中でも、「주(住)」は最も価値が高いと言えます。過去20年、ソウルの不動産価格は平均して年間6.4%のペースで上昇してきたにもかかわらず、労働者の賃金は年間4.6%しか上昇していません。この差(1.8%)はわずかに見えるかもしれませんが、複利が考慮されると、ギャップは大幅に広がります。そのため、一般の労働者の賃金だけで住宅を購入するのは難しくなってきています。このような背景のなか、多くの韓国人は変動性が高い暗号資産を、社会的流動性を獲得するための唯一の機会であると考えています。よって韓国の暗号資産投資家の多くが、社会的な地位の向上への欲望が特に強い20代、または30代の若者から構成されています。

2022年における通貨別のビットコイン取引量割合

2022年における通貨別のビットコイン取引量割合


17年から22年にかけては、韓国の暗号資産市場は一般投資家が中心でした。しかし、カカオの子会社が20年に国産ブロックチェーン「Klaytn(クレイトン)」を立ち上げたことで韓国の企業によるブロックチェーン導入に拍車がかかりました。つまり、すでに消費者の関心が高まっているなかで企業が導入をはじめたことで、より大きな市場が形成されたと言えます。韓国人起業家Do Kwonが開発した「Luna」の崩壊や、米暗号資産取引所「FTX」の倒産も引き金となり、昨年に比べ、企業によるブロックチェーンの導入のフィーバーは落ち着いてきましたが、それでも、今なお(ヒュンダイなどの製造大手企業を含む)上場企業の多くがブロックチェーンやメタバースに専念するチームを抱えて事業を模索しています。
次ページ > 「キムチプレミアム」が頻出

文=吉川絵美

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事