説得を重ねた末、レイはアシステッド・リビングホーム(高齢者向けのケア付き住宅)への体験入居に同意し、子どもたちは胸をなで下ろした。彼らは条件のいい物件を見つけ、施設側も3カ月の体験入居に同意した。
施設がレイに家具を貸してくれるので、彼はいまのところ、2つの自宅のどちらかを諦めて入居する決断を下す必要がない。詐欺に遭いやすいというレイの問題が、必ずしもこれで解決するわけではないが、彼の社会生活は、以前に比べて大いに充実するだろう。
全米アシステッド・リビング連盟(ALFA:Assisted Living Federation of America)によれば、アシステッド・リビング・コミュニティの性別構成は、女性が男性の7倍であり、レイはきっと気に入るはずだ。子どもたちが言うように、彼はハンサムで、異性に積極的だ。その上、アシステッド・リビングには、以下のような利点も彼にもたらすだろう。
1. 見守りのある環境で暮らせる。毎日の服薬を忘れていないか見てもらえる上、食事付きで、買い物や料理、掃除をする必要がない。一人暮らしをしていた時、彼はそうした家事が疎かになりがちだった。
2. レイの子どもたちは、必要があればスタッフと毎日連絡を取り合うことができる。彼の様子を尋ね、コミュニティに溶け込めているかを確認できる。彼の好きなことを伝え、彼が退屈や孤独を避けられるように手助けすることも可能だ。
3. レイの家族は、彼が詐欺師にお金を送らないように方策を練る必要がある。ひとつの手は、True Link(トゥルーリンク)の機能制限付きプリペイド・クレジットカードだ。このカードなら、ギフトカードなど特定の商品を購入できないよう設定できる。レイの娘は委任状を持っていて、カードに紐付けされた口座に一定額の入金をする法的権利は彼女にある。このことも役に立つはずだ。
教訓
レイのために計画すべきことは、まだたくさんある。高齢の家族が何らかのタイプの認知症と診断されたら、「金銭的判断能力は真っ先に衰え、その進行は速い」ということを知っておくべきだ。お金に関する論理的思考能力の低下は、必ずしも標準的な認知機能検査で検出できるとは限らない。レイのケースからわかる通り、彼は、検査で測定された能力については正常の範囲に収まっていた。検査は、金銭的判断能力や論理的思考能力に、特に的を絞ったものではないのだ。20万ドルの詐欺被害は、おそらく認知機能検査よりも的確に、彼の金銭的判断能力を示す良い例だろう。
高齢の親が詐欺のターゲットにされている兆候を発見したら、家族は保護のための対策をできる限りとる必要がある。
(forbes.com 原文)