ワサビに高齢者の記憶力向上効果 実験で確認

ワサビ(Eutrema japonicum)の根(663highland / CC BY-SA 3.0 DEED)

60歳以上の健康な成人が毎日ワサビを食べると、記憶力が向上することがわかったとの研究結果が、東北大学などのチームにより発表された。

最近の研究では、ニンニク、ショウガなどのさまざまなハーブや香辛料にも高齢者の記憶と認知能力を改善する効果があり、認知症患者にも有効であることが示されている。ワサビは、抗炎症・抗酸化作用が知られているほか、脳の鎮静効果によって認知力低下を遅らせる可能性も報告されている。このため、ワサビはサプリメントとしても広く販売されている。

最新研究では、認知健康科学や老化といった分野の研究者チームが、ワサビの認知面での効果を検証する実験を行った。被験者は60~80歳(平均65歳)の日本人72人で、病気にかかっている人や精神疾患、記憶障害のある人、特定の薬品を服用している人、および飲酒量の多い人は除外された。残った被験者は、無作為かつ本人にわからないように2グループに分けられた。1つのグループは毎日、就寝前にワサビの錠剤を服用。もう1つのグループにはプラセボ(偽薬)が与えられた。

3か月間の試験終了後、認知機能検査により被験者の精神的処理速度、注意力、短期記憶、作業記憶(情報を頭の中に一時的に維持する能力)、エピソード記憶(日々の出来事の記憶)、実行機能、および視空間認知能力を調べた。

結果、ワサビを与えられたグループは、プラセボを与えられたグループと比べ、エピソード記憶と作業記憶が有意に向上していた。一方、他の認知分野において有意な改善は見られなかった。プラセボを与えられたグループは、どの分野でも改善が見られなかった。

ワサビに含まれている化合物「6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6-MSITC)」には、抗酸化・抗炎症作用があることが過去の研究で示されている。被験者が服用した錠剤にはワサビエキスの粉末100mgが含まれ、これは0.8mgの6-MSITCに相当する。

研究チームは、6-MSITCが脳内の記憶をつかさどる海馬に作用すると推測している。6-MSITCは、神経炎症の軽減、脳細胞の酸化的損傷の予防、およびニューロン連結性の強化に役立つ可能性がある。また、6-MSITCが血液脳関門を通過して海馬などの脳組織に直接作用できることも、認知力向上につながっている可能性がある。

食品が持つ認知能力の改善効果は、ワイルドブルーベリー、ナッツ類、マメ類、色の濃い葉野菜などさまざまなもので確認されている。ワサビにも同様の効果がある可能性を示した今回の研究結果は、特に認知力低下のリスクがある高齢者に向けて、脳の健康を改善するための栄養摂取計画を開発できる可能性に光を当てるものだ。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫・編集=遠藤宗生

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事