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2023.08.30 07:45

ごま油の香りが記憶力に関連、大切なのは空腹感

Getty image

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天ぷら屋さんの前を通るときに鼻を喜ばせてくれるあのごま油の香り。ぐぐーっとお腹が鳴る。それが脳に非常にいいことがわかった。ごま油の香りを嗅ぐと記憶の定着度が上がるという研究結果が報告された。どういうことか?

お腹が減ると、胃の中でグレリンというペプチドが生成され、それが視床下部に働きかけて食欲を増進させる。そこで「ああ、お腹が減った」と感じる。同時にグレリンは、海馬に作用して記憶の定着度を高めることも知られている。つまり、空腹を感じているときは記憶力が高まるということだ。夕ご飯前がいちばん勉強がはかどる、なんて経験をした人も多いだろう。

さてごま油だが、古代インドの伝統医療「アーユルベーダ」に使われ、中国最古の薬物学書「神農本草経」でも健康によいとされてきただけあって、抗酸化作用や活性酸素の働きを抑えるゴマグリナンを多く含む健康食品でもある。しかし何より、あの絶対にお腹が空くあの香りだ。ということは、ごま油の香りで記憶力が高まるのか? と考えたごま油メーカーの竹本油脂とNTTデータ経営研究所の研究チームは、これまで定量化されていなかったごま油と空腹感との関係を解明すべく実験を行った。

実験は20歳から59歳の男女45人の協力で実施された。まずは3人1組になり、小腹が空いた状態で、ごま油でエビを炒める香りを部屋に漂わせた場合、オリーブオイルでエビを炒めた香りを漂わせた場合、何も調理しない場合の3つの条件下で会話をしてもらう。次に同じ条件で食事をしながら会話をしてもらう。最後に、空腹感と会話の内容をどれだけ覚えているかについて聞き取りをした。
縦軸は空腹度の変化量(香り発生後の空腹度 − 香り発生前の空腹度)

縦軸は空腹度の変化量(香り発生後の空腹度 − 香り発生前の空腹度)


その結果、空腹感は、香り発生前後での変化量が、ごま油の場合が突出して高かった。記憶力では、ごま油の場合が思い出す事柄の数がもっとも多いことがわかった。血中のグレリンの測定は行っていないが、ごま油の香りで記憶力が増すという仮説が正しいことが示唆されたわけだ。
縦軸は思い出した会話項目の数

縦軸は思い出した会話項目の数


研究チームは、ごま油を使って食欲が増す病院食や介護食の開発、食欲が大きく影響する認知症やうつ病の予防プログラムにごま油を活かす研究を進めるとしている。体調を崩すと食欲が減って気も滅入る。勉強も仕事もはかどらなくなる。あの空腹感は体ばかりか脳の健康の証でもあったのだ。それを促すのがごま油。考えただけでお腹が減ってきた。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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