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2023.08.29

犬猫アレルギーに大きな効果 東大らが世界で初めて光触媒での分解に成功

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犬や猫と暮らしたくてもアレルギーのためその夢を断念せざるを得ない人が少なくない。アレルギーの薬を飲みながら飼っている人もいるが、ただでさえお金がかかるペットの飼育に、さらにお金がかかってしまう。お金で済めばいいが、薬の副作用が出てしまっては目も当てられない。アナフィラキシー症状を引き起こせば命にもかかわる。薬以外にも数々の対策はあるが、どれも決め手に欠ける。しかし、ここにひとつの朗報がもたらされた。アレルギーの原因物質であるイヌアレルゲンとネコアレルゲンの分解に成功したというニュースだ。

東京大学、犬山動物総合医療センター、空気清浄機メーカーのカルテックによる研究チームは、酸化チタン型光触媒技術でイヌアレルゲンとネコアレルゲンを分解できることを世界で初めて証明した。犬アレルギーは7種類のタンパク質(Can f1~Can f7)が、猫アレルギーは8種類のタンパク質(Fel d1~Fel d8)がアレルゲンとして同定されている。これらは犬や猫の毛やフケ、唾液、尿などに含まれ、家の中のカーペットなどに付着するほか、微粒子に付着して空気中を舞う。

どんなに頑張って部屋を掃除しても取り切れるものではなく、犬や猫をこまめにシャンプーしようにも、お風呂が大嫌いな子には大変なストレスになる。空中のアレルゲンは空気清浄機で対応できるが、完全に除去できるわけではなく、微粒子をフィルターできる高級機種は価格もそれなりに高い。

実験では、酸化チタン型光触媒にイヌ皮屑粗抽出溶液100マイクロリットルを滴下して可視光線に当てたところ、人間の体内で結合してアレルギー反応を引き起こすヒトIgEとの反応が、24時間で減少。ネコ皮屑粗抽出溶液でも減少したという。また、実際にカーペットなどに付着する乾燥した皮屑も、同様に分解されることがわかった。

東京大学によれば、犬猫アレルギーによる急性喘息患者の治療費は、アメリカでは10億ドルにものぼるとのこと。ずっと薬を飲み続けるとなると、その費用は馬鹿にならない。これを応用した空気清浄機ができれば、単に取り除くだけでなく、アレルゲンをなくしてしまうという画期的なものとなる。犬や猫との互いに快適な生活が実現するばかりか、薬代やそのほかの対策グッズや労力といったコストを大幅に減らせるかもしれない。

このごろでは保護犬や保護猫に関心を持つ人が増え、引き取り手も多くなっているが、せっかくもらわれていった先の家族にアレルギーが出て泣く泣く返すという事例も少なくない。あってはならないことだが、殺処分されてしまう子もいる。今回の発見は、そんな悲劇も減らしてくれそうだ。

プレスリリース

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