老いた体を若い体と結合 「パラバイオーシス」の若返り効果、マウスで確認

高齢の母親を抱きしめる女性(Shutterstock)

もし、生物学的な年齢を巻き戻せるとしたらどうだろう。日に日に老いていくのではなく、若返っていくとしたら? 米ハーバード大学医学大学院(HMS)の研究チームが先ごろ発表した研究結果は、この考え方が思いのほかSF的ではないことを示唆している。

英科学誌ネイチャー・エイジングに掲載されたボーハン・チャン博士らの研究では、若いマウスと長期間にわたり結合された老齢マウスが「若返り」を始め、同世代のマウスと比べて最大9%長生きすることを発見した。まだ初期段階の研究とはいえ、加齢と長寿の未来に関する刺激的な示唆に富む結果だ。

パラバイオーシス

研究チームは「パラバイオーシス」と呼ばれる実験技法を用い、年老いたマウスと若いマウスを結合した。これは、非常に複雑な輸血のようなものだ。通常の輸血では片方のマウスから血液を採取してもう一方のマウスに注入するが、パラバイオーシスでは2匹のマウスを外科手術で接合し、リアルタイムな輸血を継続的に行う。

パラバイオーシスで結合された動物は、単に血液を交換するのではなく、1つの生理系を共有し発達させる。血液からホルモンまであらゆるものを交換し合いながら、いわば融合するのである。

研究チームは、若いマウス同士、老いたマウス同士、若いマウスと老いたマウスをそれぞれ結合して対照実験を行い、パラバイオーシスの効果を比較検証した。結合期間中は各マウスの肝臓と血液を分析し、加齢関連の各種バイオマーカーを調べた。

マウスは結合状態を丸3カ月間維持してから外科手術で分離し、1カ月間の回復期間を置いた後に生理学的データを記録した。数匹のマウスは、パラバイオーシスが寿命に及ぼす影響を理解するため自然死するまで自由にさせた。

生物学的年齢と実年齢

人は誰もが年をとる。地球が太陽の周りを1周するごとに、1年分の歳を重ねる。しかし、誰もが同じスピードで年をとっているわけではないことが次第に明らかになってきた。実年齢が同じ2人でも、「生物学的年齢」が大きく異なる場合があるのだ。

実年齢は単純に誕生日を迎えた回数を指すが、生物学的年齢は血液、臓器、遺伝子のレベルでの老化を示す指標であり、その人の「本当の」身体年齢だ。心臓病やがんなど、加齢に伴う疾患を発症するリスクは生物学的年齢に基づいて決まり、それは実年齢より低いこともあれば、高いこともある。
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翻訳・編集=荻原藤緒

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