デジタル時代は「友達が多すぎ」? 幸せな人間関係を築く心理学的アドバイス

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複雑な人間関係に関する指針として、長年利用されている「ダンバー数」は、1人の人間が安定した社会的関係を維持できる人数を定めた心理学的閾値だ。伝統的に150人程度が適切とされるこの概念は、英国の人類学者であるロビン・ダンバーが提唱したものであり、人間の脳の進化的発達に起因している。

しかし、私たちがデジタル時代の広大な領域を動き回り、社会的つながりが地理的境界を遥かに越えるようになるにつれ、いくつか疑問が湧いてくる。果たしてダンバー数の妥当性は今も変わらないのか、それともデジタル時代は社会的つながりの法則を書き換えるのだろうか?

デジタル時代のダンバー数

ダンバー数は認識の進化の産物であり、人間の脳が操り育むことのできる社会的つながりの容量が有限であることを反映している。結束の固い少数部族から広大な社会構造まで、さまざまな社会に存在していることが、この概念の普遍性をよく表している。

脳は、社会的な輪の深さと広さに自然な制約を課しているように思われる。しかし、人々がデジタル世界に踏み入るにつれ、社会的つながりの動態は重大な変化を遂げていく。オンラインプラットフォーム普及の高まりは、その触媒でもあり、それを破壊するものでもあるという、両方の機能を果たすようになる。

『Cyberpsychology, Behavior, and Social Networking』誌に掲載された研究では、ソーシャルメディアの使用が社会的つながりと人間関係の親密さに与える影響を調べた。研究結果は、ソーシャルメディアで過ごす時間が長いほど、オンライン「友達」の人数は増えるが、オフラインの友達はさほど増えないことを示した。さらに、これらの結果と、オンラインあるいはオフラインの友達に対する親密さの感覚との間に相関はなかった。

オンラインプラットフォームは、私たちが数多くの多様な人達とつながる能力を強化し、ダンバー数の伝統的制約に修正を迫っている。しかしその一方で、疑問が湧いてくる。膨大な数のつながりは、人間関係の質を薄めてはいないだろうか? バーチャルな世界では、社会的な交流が新たな色彩を帯びてくる。人々が数多くの遠いつながりと知り合いの海をさまようようになる中で、「弱い紐帯(ちゅうたい、結びつき)」という概念が浮上してきた。弱い紐帯が私たちの精神的健康に与える影響に関するさまざまな推論が、世間の注目を浴びている。

果たしてこのような弱いつながりは、社会的な支えとして意味をなすのか? それとも、社会的な過負荷と孤立という、デジタル時代に高まりつつある矛盾した感情に寄与しているのだろうか?
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翻訳=高橋信夫

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