喫煙や失業よりも「賃貸住宅で暮らす」ほうが老化が早い、研究結果

Getty Images

賃貸住宅に住むことによるストレス、たとえば家賃を払うお金がない、住居環境が悪い、引っ越しが煩わしい、賃借であることの引け目などによって、失業より100%以上、喫煙より50%以上も生物学的な老化が早まり「健康に深刻な影響が与えられる」ことをオーストラリアの研究チームが明らかにした

慢性疾患や死亡のリスク増加といった影響は、賃借がもたらす生物学的な老化の早まりに関連しているが、それらの影響は必ずしも永久に続くものではなく「住宅政策の変更によって健康を改善」し、受けた被害を解消する可能性があるとも研究チームは述べている。

過去の研究によると、住居の過密あるいは不適切な暖房といった物理的な条件が明確な影響を与えているほか、相対的な購入能力や治安など、無形の因子も健康に影響を与えていると学術誌British Medical Journal’s Journal of Epidemiology & Community Healthに掲載された研究は述べている。

研究チームは、英国世帯縦断調査のデータおよび1500人近い協力者の血液サンプルを使って、老化バイオマーカー(生体指標)に関する情報を集め性別、国籍、教育水準、富裕度、食生活、ストレス度、BMIおよび喫煙に関するデータも加味した。

同研究は、賃借人にとって有利な住宅政策、たとえば無過失での退去の廃止、賃料の値上げの制限、住居環境の改善などが、賃貸のもたらす生物学的老化を遅らせる可能性があることを示唆した。

住居を借りることが持ち家よりも老化を加速するという発見には、1つ例外がある。政府が補助金を支給する住宅だ。政府から家賃補助を受けている人たちは、個人で賃借している人たちのような生物学的老化の加速を経験していなかった。

論文では、持ち家の人よりも賃借人が毎年2週間半分も多く老いていくと述べられている。

今年4月にJournal of the American Medical Association誌に掲載された研究によると、貧困は米国における心臓病、がん、喫煙に続く第4位の死亡リスク因子だ。2019年、10年以上続く貧困体験に関連したリスク因子によって30万人近い人々が死亡し、1年だけ貧困を経験した人も、脳梗塞、アルツハイマー病、あるいは糖尿病以上に死亡リスクが高まっている。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事