海底に眠るREEの鉱床は、人間が消費できる莫大な天然資源となる可能性があり、グリーン革命を促進するものだが、これらの資源を際限なく開発すれば、人間の生存にとって重要な周辺海域の生態系を破壊する深刻なリスクが生じる。海底の採掘は、生態系の断片化を招き、海底に固有の種の絶滅につながるおそれがある。
海底の採掘はまた、粒子状汚染物質を大量に発生させる。これが沈殿するまでにはかなりの時間がかかり、海洋生物に害をもたらす、毒性のある「プルーム(雲状の塊)」が生じる。さらにこうした採掘は、多大な騒音被害をもたらし、これが海洋生態系に相当の悪影響を与えるはずだ。これに関連して、海底における際限のない産業活動は、生物多様性や世界の海の健全性を危機に陥れるだろう。
深海採掘の悪影響は、人間にも及ぶ可能性が高い。粒子状汚染物質によって、多くの二酸化炭素を吸収するのに役立っていた微生物が死に絶える可能性がある。さらには、水産資源にダメージを与えるほか、欧州に暖気を供給しているメキシコ湾流など、世界規模の海流にも影響を与えるだろう。
人間による自然破壊はこれが初めてではない。工業生産により、我々人間はすでに多くの災厄をもたらしている。だが、海底採掘によって生じ得る環境への脅威は、この産業が飛躍的に発展する前の今こそ、考慮する価値があるはずだ。
適切な配慮をしなければ、深海におけるREEの採掘は、これによって開発が進められるグリーンテクノロジーが守ろうとしているはずの地球環境に害を及ぼすという、皮肉な結果を招くおそれがある。
海底採掘はすでに始まっている。たとえ西側諸国が権益を確保しなくても、西側諸国に対立する国々が権益を確保しようとするのは間違いない。そしてそれらの国が、海底開発に関する環境基準を形作ることになるだろう。西側の各社がとるべき唯一の道は、技術開発と資本投資において協力することだ。また、ISAに対して、2025年に最終合意に達するよう促すことだ。そして、米国の採掘企業が、深海で中国と競争できるような規制の枠組みの作成に着手することも必要になる。
(forbes.com 原文)