健康

2023.12.06 11:30

「ゆらぎ・ゆだね・ゆとり」が、ウェルビーイングのヒントとなる

言葉ばかりが先行し、ウェルビーイングをどう社会に実装していくのかという具体的な方法論が不在な中、「ゆ理論」を活用することで、ウェルビーイングに資するサービスやプロダクトが次々が生み出されうる。最後に、渡邊とチェンは次のように語ってくれた。

「もし、ウェルビーイングを目指して生きる、と言われたら違和感を感じませんか。ウェルビーイングは究極のゴールではないですし、未来のウェルビーイングのために何かを犠牲にしなければならないものでもありません。

では、ウェルビーイングを目指すのではなく、『ウェルビーイングに生きる』といったときに、何を手掛かりにするのか。そのときに『ゆらぎ・ゆだね・ゆとり』というガイドがあると、行動指針を失わずに進むことができると思います」(渡邊)
小中学校や大学生、企業でのワークショップの参加者にウェルビーイングについてのアンケートをとり抽出して作られたカード。2024年1月に一般販売予定。

渡邊はウェルビーイングを実践するための各種ツールを開発している。こちらは、サービスやプロダクトが持つウェルビーイングの要因を対話しながら把握したり、チームビルディングにも使える「わたしたちのウェルビーイングカード」。2024年2月に一般販売予定。

「ウェルビーイングと聞くと難解なイメージを抱かれるかもしれませんが、そんなことはありません。それは、わたしたちがこの世界で可能な限りよく生きるための小さな知恵から始まり、メンタルヘルスや幸福について話し合うためのきっかけとなる言葉なのかなと。

『ゆ理論』は、デザインやものづくりに従事する人だけではなく、あらゆる人たちが日々の生活のなかで工夫をして、小さく実験するためのガイドとして考えました。ビジネスの現場に“ケアの視点”を取り入れるのにも活用できると思います」(チェン)


渡邊淳司◎日本電信電話株式会社(NTT)上席特別研究員。人間の触覚のメカニズム、コミュニケーションに関する研究や、ウェルビーイングな社会を実現する方法論について探究。主著に『情報を生み出す触覚の知性』(化学同人、毎日出版文化賞〈自然科学部門〉受賞)、共著に『見えないスポーツ図鑑』(晶文社)など多数。2024年1月開催予定の展示会「WELL-BEING TECHNOLOGY」の企画委員長を務める。「意識研究会」に参画。

ドミニク・チェン◎早稲田大学文学学術院 教授。ウェルビーイング、発酵、生命性をキーワードに、メディアテクノロジーと人間の関係性を研究。主著に『未来をつくる言葉―わかりあえなさをつなぐために』(新潮社)、監修・翻訳書にサンダー・キャッツ著『メタファーとしての発酵』(オライリー・ジャパン)など多数。

文=国府田淳 写真=山田大輔

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