ビジネス

2023.10.27

3カ国にルーツを持つ起業家 NFT事業で日本市場を選んだ理由|レシカCEO クリス・ダイ

クリス・ダイ氏

大企業とスタートアップが、キャリアの選択肢の一つになってきている。本連載では、スタートアップで活躍する起業家やコアメンバーの方へ、現在の働き方やキャリアについて聞く。

第6回は、現実世界の価値をブロックチェーン技術でNFT化する「レシカ」のCEOクリス・ダイさん。同社は2018年12月に設立し、ウイスキー樽の所有権や不動産の利用権といった現実資産をトークン化し販売。そのほか、NFTを売買するマーケットプレイスの構築やコンサルティングもおこなっている。

日本で育ち、アメリカで教育を受け、中国にルーツを持つダイさんだが、あえて日本で起業することを選んだ。その理由と日本市場におけるNFTの可能性について話を聞いた。

スタンフォード大学の同窓会でWeb3に興味

──そもそもWeb3領域で起業されのは、どんなきっかけだったのでしょうか。

スタンフォード大学を卒業後、アクセンチュアで日本企業のコンサルティングを行い、その後、中国に戻って家業の経営を9年ほどやっていました。上海ではスタンフォード大学の同窓会の会長も務めていたのですが、会員の半数以上は起業家やベンチャーキャピタル(VC)に関わっていました。

当時、実家で私がやっていた事業は国際貿易や物流分野で、スタートアップのような成長性はあまり見込めなかった。2013年にスタンフォード大学の同窓会でブロックチェーン技術の講演を聞く機会があり、この分散型技術と思想は社会の在り方を変える次のインターネット技術だと直感しました。世界を変えていこうとしている同窓生の姿を目の当たりにして、私も人生の中で社会に大きなインパクトを与えられることをやりたいと思うようになりました。そこで、それまでやっていた事業を他の人たちに任せて、新しいことをやるために起業したんです。

──海外ではなく、日本で起業されたのはなぜだったのでしょうか?

最初に立ち上げたのはWeb3のプロジェクトを支援する「LongHash Japan (現在はLongHash Venturesに変更)」というWeb3に特化したインキュベーションセンターでした。

ブロックチェーンという領域は、政策に左右されるんです。レシカを起業する前は、日本は政策という観点で事業がやりやすかったんです。

しかし2018年に暗号通貨取引所を運営するコインチェックがハッキングされ仮想通貨が流出したことで、日本政府の姿勢が仮想通貨推進から規制へと方向転換したため、海外スタートアップもみんな日本から撤退してしまった。そこで大手企業向けに、ブロックチェーンのコンサルティングをするレシカを作ったんです。

規制が厳しくなった後もなぜそのまま日本にいたかと言うと、このビジネスをロングタームで見ていたからです。

──起業されてからのチャレンジをどうやって乗り越えられましたか?

レシカ設立後2年ほどは、最初の受注を獲得するまでに時間がかかりましたね。当時は日本企業もブロックチェーンに馴染みがなかった時期なので、いきなり「PoC(実証実験)やりませんか」と言っても受け入れてもらえないわけです。

ただ、いろいろな人の紹介やコネクションに助けられつつ、規模を問わずにプロジェクトを引き受け、ブロックチェーンに関する本も出版して、セミナーや勉強会も無料でやっていました。2019年頃から問い合わせも増えて、大手企業と契約できるようになってきました。
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インタビュアー:Chiyo Watanabe Kamino Plug and Play Japan Content Marketing Associate

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