アウジーイウカの攻撃が本当にウクライナ軍の戦力を引き付けることを意図したものだとすれば、それはおそらく失敗している。「ウクライナ当局はすでに、アウジーイウカへの攻撃は戦力を引くための作戦だと認識しており、この軸にウクライナ軍が兵士を過度に投入することはないだろう」と米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は指摘した。
もしかするとこの攻撃は、引き付けの作戦ではないかもしれない。ロシアは単に、冬の到来を前にして、大規模な攻撃の機会が減少する中で勝利を収めようと必死になっているだけなのかもしれない。アウジーイウカの戦いで重要なのは、アウジーイウカ自体ではない可能性がある。
それはある意味、筋が通っているものの、実際には無意味な行為だ。ISWは「仮にアウジーイウカを掌握したとしても、ドネツク州の他の地域へ進軍する新たなルートが開かれることはない」と説明している。
だが、ロシアがアウジーイウカを象徴的な価値のために狙ったのだとすれば、それはひどい誤算だった。多くの血が流れた作戦が始まって2週間が経過した今、アウジーイウカが象徴しているのは、ロシア兵の死と大破した戦車だけだ。
攻勢の初日にロシア軍は撤退することもできただろう。ISWの推定では、ロシア軍は少なくとも45両の戦車や装甲車両を失った。だが、ロシア軍は攻勢を続けた。中隊や大隊が全滅しても、指揮官たちは気にしなかったようだ。
その意味で、ロシア軍のアウジーイウカでの作戦は、今年初めの東部ドネツク州ブフレダールでの作戦と不気味なほど類似している。ドネツクの南西約40kmに位置するブフレダールでは、ロシア軍の海兵隊が数週間、ひっきりなしにウクライナ軍の守備隊に猛攻撃をかけた。
ウクライナ側は、突撃隊を砲撃。ある交差点には、ロシア軍がウクライナ軍の攻撃に対応できなかった痕跡が残されていた。ウクライナ軍が数週間にわたってロシア軍に対する待ち伏せ攻撃を繰り返したこの交差点には、破壊された十数両の戦車や戦闘車両の残骸が散らばっていた。
激戦を経たブフレダールはいま、ウクライナ側にある。ロシア軍が制圧しようとできる限りの攻勢をかけているにもかかわらず、アウジーイウカも同様だ。
この戦いがどうなるかは分からない。ロシア軍は昨冬、ブフレダールの占領に失敗し、2つの海兵隊旅団の大部分を無駄に失った。だが春には、ドネツクの北約48kmに位置するバフムート周辺での戦いで、それより多くの犠牲を払いつつも、勝利を収めた。ウクライナ軍の旅団は時間を稼ぎ、ロシア軍に死傷者を出しながらバフムートから撤退したため、ロシア側にとってこの勝利は割に合わないものとなった。
キルゾーンが待ち受けるアウジーイウカに連隊を投入し続ければ、ロシア軍は最終的には同市を制圧できるかもしれない。だが、大きな損失を被った状態では、約970kmに及ぶ前線での作戦に支障をきたしかねない。
「この速い死傷ペースが続く限り、ロシア軍は効果的な攻勢をかけるのに必要とされる水準を満たせるよう、新兵を十分に訓練することができなくなる」と英王立防衛安全保障研究所は指摘している。
(forbess.com 原文)