政治

2023.04.30

ドローン攻撃でウクライナ東部にできたロシア軍戦車の「墓場」

Getty Images

ウクライナ東部ドンバス地方のドネツクのすぐ西に位置するネヴェルズケの近くに、事実上、ロシア軍の戦車の「墓場」と化している野原がある。

4月26日からわずか3日間で、ウクライナ第59機械化旅団のドローンを操作する兵士はロシア軍の指揮下で戦うウクライナ分離主義者のものと見られる戦車T-72とT-80を少なくとも4両撃破した。

ドローンによるこの連続攻撃は、ウクライナ軍とロシア軍が小型で安価なミサイルにしてきた、それほど高価ではないレース用ドローンの攻撃の有効性を示している。

また、この連続攻撃はリーダーシップの欠如が兵士の死や装備の破損を招くということを思い知らせるものでもある。有能な指揮官なら最初の2、3回で学び、同じ殺戮地帯に戦車を送るのをやめるだろう。

分離主義者によるドネツク人民共和国の中心地であるドネツクの西に広がる野原と並木道は、ロシア軍とその同盟軍にとって何カ月も恐ろしいものだった。

ロシア海兵隊は今年初め、ネヴェルズケの北20マイル(約32キロ)にあるブフレダール郊外のウクライナ軍の地雷原で繰り返された正面切っての攻撃で、数十台の車両とおそらく数百人の兵士を失った。

ネヴェルズケ付近での戦車による攻撃の規模は小さかったが、成功には程遠かった。

ウクライナ第59旅団は4月26日、爆薬を搭載した約500ドル(約6万8000円)する1人称視点(FPV)のレーシングドローンの1台が、別の戦車に戦場から牽引されていたT-72Aにものすごい勢いで突っ込むところをとらえた動画を投稿した。この映像には近くに3両目の戦車の残骸が映っているようだ。

その2日後、同旅団は26日の攻撃と同じ場所でのFPVドローンによる2回の攻撃を映した2本目の動画を公開した。その動画ではドローンがT-72BとT-80Bを爆破している。

集中砲撃で戦車の一部が損傷した後に、ドローンは後始末をしていただけの可能性はある。映像では砲弾の跡が確認できる。

ネヴェルズケ周辺での明らかに不均衡な損失は何ら驚くことではない。ロシア軍はこの地域に第9海兵旅団と第110自動車化狙撃旅団という、もともと分離主義者の部隊を配置してきた。

これらの旅団は、ロシア軍が昨年9月に自軍に組み入れるまで分離主義者の指揮で戦っていた。旧分離主義者部隊は装備や物資の入手が最後になりがちだ。ウクライナ軍がネヴェルズケ近くの畑で50年前のT-72Aを鹵獲(ろかく)したのには理由がある。

ネヴェルズケ周辺での戦闘の規模を誇張しないことが重要だ。惨劇となったロシア軍のブフレダールへの失敗した攻撃に比べれば小競り合いだ。そして、バフムートをめぐる血まみれの戦いという大地獄に比べれば爆竹程度だ。

しかしロシアがウクライナに本格侵攻して14カ月が経つが、分離主義者の部隊がいまだに500ドルのドローンによる攻撃から戦車を守れていないことは注目に値する。さらに悪いことに、戦車を同じ殺戮地帯に次々と送り込むのをやめることを学んでいない。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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