立川流のコミュニケーションとは?
──立川さんはトヨタやブリヂストンの開発ドライバーも務められていて、レースで結果を出す上でも「クルマやタイヤの情報をエンジニアやチームに伝える」ことは重要なタスクの一つです。伝え方で心がけてきたことはありますか?擬音語や身振り手振りはよく使います。もちろん、例えば後輪が滑った時に「オーバーステア」といった専門用語も使いますが、より詳しく伝わるように、色々な表現を使いながら工夫をしています。
クルマやタイヤの状態はデータでも出てくるのですが、最も重要なのは「なぜ」そういったデータや症状が出ているのか、あるいはなぜデータに出てこないのかをよく理解することなんです。
例えばオーバーステアの車をそのまま運転するプロはいないわけで、クルマそのものの現象なのか、ドライバーの操作による結果なのかを正確に見極めたり、データには出ない問題を指摘して、共有する必要があります。
あと気をつけないといけないのは、相手と細かいことまできちんと伝わるようなコミュニケーションが取れているかどうかということです。例えば先ほどの擬音語などは、僕の場合には初対面の方にはあまり使いません。
どういった伝え方が良いのかは相手によります。聞く側の時も同様に、相手が言おうとしていることを注意深く理解する心がけが必要だと思っています。
──まわりを巻き込む力でしょうか。
もともとはすごい人見知りなんですけどね(笑)。でも特に若いスタッフなんかはなかなか僕に話しかけづらいと思うので、日頃から自分から仕事と関係がない雑談などで話しかけています。
僕は、例えば監督をやってても、「俺は監督だ!」みたいなやり方はしません。それは単なる役目であって、もちろん厳しいことを言う必要がある場面や責任の所在とかはあるにせよ、上とか下とか言って壁を作るのはちょっと違うなと。
だから話しかけてほしいし、自分からもそうするし、くだらない話なんかもしながら一緒に笑ったりしてコミュニケーションを取っているうちに、自然と気持ちが通じ合っていくといいなと思っています。
──監督をなさったことでご自身のキャリアに何か影響はありましたか?
レースに直接関わる部分では、やっていることはドライバーの時とあまり変わりはないんです。ずっとチームを引っ張る覚悟でやってきているので、自分で乗るかどうかの違いくらいで。
スーパーGTで2019年にドライバーと総監督を兼任した時にも、大まかに言うと、肩書きがあるかないかくらいでした。