選手たちのプレーを支えるジャージーは、ニュージーランド発祥のラグビーブランド「カンタベリー(Canterbury)」が1999年から開発に携わり、今大会で7モデル目になるという。
前モデルも、チームから史上最高と言われるほど機能・デザイン面ともに評価が高く、大きな改善が求められていたわけではなかったが、開発の総責任者であるゴールドウイン・カンタベリー事業部長の石塚正行氏を中心に、前作を凌駕する新ジャージーを作ることにこだわった。
代表ジャージー史上で初めて、ファンから回収したウェアを再利用した再生ポリエステル繊維を使用したジャージーを開発したのだ。
カンタベリーを日本展開するゴールドウインは、企業理念、ESG経営の基本方針のもと、地球環境の持続可能性への貢献、循環型社会の実現を目指し、様々な活動に取り組んでいる背景があった。
スポーツの中で特に強度が求められるラグビーウェアにおいても、当然のように再生繊維を用いることを決めた、開発チームのチャレンジを「伝えたい」。その想いから、開発ストーリーをまとめた動画を制作し、カンタベリーのYouTubeチャンネルで公開した。
動画でも描かれているように、代表史上初、ファンの想いをのせた、サステナブルな新ジャージの開発は、コロナ禍も相まって、困難を極めた。
ケミカルリサイクルされた再生ポリエステル繊維の採用を決め、2020年春に開発をスタートし、納得できる素材ができると確信したのが2023年の春。3年を要した。
そもそも、ラグビーのジャージで特に重要な機能とされる「耐久性・軽量性・運動性・快適性」は、矛盾する関係にあり、全て向上させることは容易ではない。
耐久性を高めようと生地を厚くすれば重くなり、汗も乾きにくくなる。運動性を高めようと伸縮性を良くすれば、つかまれた時に生地が伸び、指が離れにくくなってしまうといった具合だ。
そこに、環境に優しい一方で強度に課題があるとされる再生ポリエステル繊維の使用が加わった。実際、既存の繊維を使ってシミュレーションしてみても、やはり求められる強度を満たすことができなかった。