ラグビー代表ジャージーはリサイクル品 カンタベリー開発秘話

宇藤 智子

ならば、自分たちで作るしかない──。

コロナ禍で顔を合わせてのミーティングや選手のモニタリングもままならないまま大会が迫る中、創業の地・富山県小矢部市に構える研究開発拠点「ゴールドウイン テック・ラボ」のスタッフを中心に、協力各社とONE TEAMとなって、この難しい生地の開発に挑んだ。
●2023新ジャージー開発体制● 企画・開発・製造:株式会社ゴールドウイン| 原料素材製造:株式会社JEPLAN(福岡県北九州市)| 原料糸調整・処理:豊島株式会社(愛知県名古屋市)| 生地製造:福井経編興業株式会社(福井県福井市)、株式会社ヤマヨテクスタイル(和歌山県上富田町)| 特殊加工:東洋染工株式会社(福井県坂井市)

開発手法、デザインにもこだわり

開発手法を「デジタルに大転換」したことも、大きなポイントとなった。

前回の開発では「現代の名工」沼田喜四司氏が中心となり、長年培った経験と独自の技法を生かしながら進められたが、今回は未来を担う人材を育成するためにも、氏が見守りつつ、テック・ラボの若いスタッフたちが先進テクノロジーを駆使した開発に挑むこととした。

より選手たちの身体に快適にフィットする、動きやすいジャージーを目指して、日本トップレベルの84選手の協力により、全身を3Dスキャン計測し、得られた膨大なデータをもとに、ポジションごとに体型モデルを構築。そこから今回は体型やプレーの特徴が大きく異なる、フォワード用とバックス用の2種類のパターンを開発した。
各ポジションの選手の体型データを合成した3Dモデル(上)とそれをさらに集約してつくりあげた二つのベースモデル(下)。太いクラスターと細いクラスターでは、同じ身長でもバストやウエストは10cm以上の差があるという

各ポジションの選手の体型データを合成した3Dモデル(上)とそれをさらに集約してつくりあげた2つのベースモデル(下)。太いクラスターと細いクラスターでは、同じ身長でもバストやウエストは10cm以上の差があるという


「フォワード用」では、最前列で体を張り、スクラムで相手フォワードと直接組み合うポジションにこたえるべく、強いコンタクトに負けない耐久性と安心できるホールド感、そして胸部が発達した体型に負担をかけないシルエットを実現。

そして、フォワードが獲得したボールを前に進め、相手をかわしてトライにつなげる「バックス用」では、より軽快に走ることができる軽量性、伸縮性とともに、相手選手につかまれにくいシルエット、絶妙なストレッチバランスを高次元でかなえた。

もちろん、デザイン面でも抜かりはない。

赤白のストライプ、縁起を意味するWAGARA(吉祥文様)といったアイデンティティをレガシーとして継承し、コンセプトも前回に続き「兜:KABUTO」とした。武士道の精神で、チームを一つにして世界へ挑む日本人のスピリットを表現した。

また、今大会の開催地・フランスへのリスペクトを込め、国花であるユリの紋章を、胸の部分にデザインしたのだという。
ラグビー日本代表2023新ジャージー フォワード用(写真左)とバックス用

ラグビー日本代表2023新ジャージー フォワード用(写真左)とバックス用


こうして「優勝を目指す選手たちがすべての力を発揮できるジャージ」「ファンの想いを込めたジャージー」「再び日本を1つにするジャージー」を目指し開発された、ラグビー日本代表・ブレイブブロッサムズ(Brave Blossoms、勇敢な桜の戦士たち)のシン・ジャージー。

史上初を成し遂げた開発者たちの挑戦にも思いを馳せながら、この4年に一度のワールドカップ、選手たちのプレーを楽しみたい。

>> ラグビー日本代表2023新ジャージー 特設サイト

ゴールドウイン プレスリリース:
>> ≪代表史上初のファンの想いを乗せた再生ポリエステル繊維を採用≫ コンセプトは“Made to BE TOUGH” ラグビー日本代表2023新ジャージーを発表
>> ≪選手、関係者から高評価を受けた2019年の日本代表ジャージーを如何に凌駕したのか≫ カンタベリー ラグビー日本代表2023ジャージーの開発ストーリー動画を公開

写真=ゴールドウイン 文=宇藤智子

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