スーパーGTの最速男、立川祐路が愛された理由

──クルマを操って争うモータースポーツにおいて、「テクノロジーの進化」は勝敗を分ける重要な要素ですが、どのような影響を受けましたか?

年々スピードが上がってキツい面もありますが、昔は昔でマニュアルシフトで操作が多かったり、車が不安定でねじ伏せるようにして走ったりと大変なことも多かったです。それに何と言ってもすごく暑かった、熱中症になったくらいでしたから。今はエンジンパワーをロスしない軽いエアコンがついて、身体は劇的に楽になりました。

あと車が安定したこともそうですが、特にタイヤがすごく進化しました。今では決勝レースで最後までタイヤがもたないということはほとんど無くなり、タイヤをもたせる走りではなく、「ずっと全開でプッシュし続けるような走り」が求められるようになりました。一瞬たりとも気が抜けないという。ここ20年ぐらいの間で、求められる能力が変わってきました。
スーパーGT500クラス ZENT CERUMO GR Supraの立川祐路選手

「ズレてる」走りに秘訣あり

──立川さん最大の個性である「走りの速さと強さ」について、コーナーでぎりぎりまでブレーキを踏まずに深く突っ込んで、きゅっと曲がって抜けていく、といったアグレッシブな走りが印象的ですが、これはどのようにマシンをコントロールしているのですか?

あんまり理論的に考えてやるタイプじゃないんです。もっと言うと、一人で走る時にはある程度理論通りに行ったりもしますが、バトルの時なんかはやっぱり「直感」で走っています。野生の勘、動物的な勘というか。相手との距離感とか、タイヤ、マシンの状態だとか色々ありますし、考えて走っていたのではもう遅いですから。

今、大抵のことはデータロガーで見られるので、みんなスピードだとか運転の仕方とかそれを見て、他の選手のデータと比べたりして、もうちょっとこうしたほうがいいかなとか結構やるんですけど、僕はほとんどやりません。

でもたまにちょろっと見てみると、理論からも、人の走りともちょっと「ズレてる」んですよね。例えば今一緒に組んでいる石浦宏明選手なんかは、もう教科書通りの理想的な運転なんですが、僕の運転はだいぶズレていて、適当な運転というか、直感的に走ってる部分がある。自分なりの感覚はあるんですけどね。
立川祐路選手

──ズレてると言えば「左足ブレーキ」も、今では当たり前となっていますが、立川さんが始めたとも言えます。躊躇い・迷いのようなものはなかったのでしょうか?

4輪にステップアップして右足でブレーキを踏むのが当時当たり前でしたが、何かそのやりづらさというか違和感がありました。初めて乗った乗り物がカートで、カートは左足でブレーキを踏むしかありませんから。

初めてJTCC(全日本ツーリングカー選手権)に乗った時に左足で踏んだほうが自分に合ってたのでそのまま、という感じで、変えるつもりは全然なかったです。

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写真=GTアソシエイション 編集=宇藤智子

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