スーパーGTの最速男、立川祐路が愛された理由

──ではスーパーGTの魅力でもあるオーバーテイクやバトルについて、「抜かれないように相手の進路をブロックする」のはセオリーとも言える戦い方ですが、立川さんはあまりそれをされない。どのような考えからなのでしょうか?

後ろから差を詰められて来られると、結構みんなインをふさごうとするのですが、僕はそういうふうにブロックするのが苦手で、やっぱり一番ブレーキでコーナー深くまで飛び込んで「速く」抜けられるのは、通常走っているラインなんです。

自分が限界まで飛び込んでいければ、相手がそれより飛び込めるわけはないと思っているし、相手が膨らんできて接触されてしまう可能性もあるので、無理にきつくコーナーを回るより全然いいという単純な考えです。

あと、スーパーGTの場合は速度の異なる2つのクラスが混走し、長い距離で争っているので、一時的な順位や瞬間にとらわれないで、「最後にどう勝つかを組み立てること」が重要です。

接近戦のタイミングで違うクラスの車に引っかからないようにするためには、先の先まで考えて、例えばあえて一時的に速度を落として走る、といったような「駆け引き」も必要になってきます。追われている時にそれをやるのはすごく勇気がいることでもあるので、できる人はごく少ない。

つい「抜かれないように一生懸命走ってるだけ」になっちゃいがちなんですよね。でもそうすると余裕がなくなって、隙を突かれて抜かれてしまったりします。抜いたり抜かれたり、また抜いたり、と状況を見極めながら戦うレースなんです。
スーパーGT500クラス ZENT CERUMO GR Supraの立川祐路選手

──バトルの中での大きなクラッシュもあまりなかったです。どう回避してきましたか?

負けず嫌いの度が過ぎて、引き際を知らないと、接触してしまいます。引き際をきちんとする、これ以上は無理だというタイミングをしっかりと見極めることが大事です。

強引に攻めてぶつけて終わる、みたいなことがアグレッシブなんて言われることがありますが、それはただの下手くそというか無謀なだけであって、プロの技ではないですよね。ギリギリのところでコントロールできるのがプロであって、上手いドライバーです。

若い頃には無茶もして、失敗して学びました(笑)。メーカーの威信をかけて、みんなで作り上げた車を一瞬でぶつけちゃうわけですから、めちゃめちゃ怒られましたし、すごく悔しいというか、情けないというか、なんとも言えない思いを何度もして、コントロールを覚えていきました。

──今の若い選手はあまり派手に失敗しないですね。

子供の頃からレースを始めて、ある程度できあがった状態でステップアップしてきていますから、昔みたいにめちゃくちゃな人はあまりいないです。

あとはギリギリのところでコントロール、というのがポイントです。手前すぎても抜けない、速くないドライバーになってしまいますから。

だから、若いうちに多少接触することはあっても、攻めることができている人にはチャンスがある。コントロールを身につけられるかどうかは本人次第ですが、強い気持ちで攻められない人をできるようにするほうが多分難しいですよね。

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写真=GTアソシエイション 編集=宇藤智子

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