欧州

2023.10.20 12:00

ウクライナのミサイル「ATACMS」は残念だが戦車を破壊できない

M39と、M39の弾頭にある重量450gほどのM74子弾は表面がさほど強固でない標的を攻撃するのに最適だ。M74は鋼鉄とタングステンで覆われている。「着弾して爆発すると、子弾は高速で飛び散る大量の鋼鉄片となり、トラックのタイヤやミサイル弾、装甲の薄い車両、レーダーアンテナなどの標的に威力を発揮する」と米陸軍少佐のジェームズ・ハットンは陸軍教訓センターの出版物に書いている。

だが100万ドル(約1億5000万円)もするM39を戦車連隊への攻撃で無駄に使ってはいけない。「装甲車に対しては効果がない」とハットンは強調する。

確かに、M74をばらまくと戦車の照準装置にダメージを与える可能性があり、うまくいけば戦車上部の薄い装甲を貫通してエンジンをへこませるかもしれない。だが戦車に追加の装甲が全体的に施されていれば、効果は期待できない。

米陸軍が1990年代後半に誘導式の対戦車弾13発を搭載できるATACMSミサイルの新型を開発したのには、それなりの理由がある。陸軍は最終的にこの新型ミサイルの実用化を中止したが、それは他のATACMSの派生型の戦車破壊能力が突然向上したからではない。コスト削減のためだった。

バイデン政権は、自国の「軍事面の即応性を危険にさらすことなく」ウクライナにATACMSを供給すると強調している。それは、ロケットモーターの寿命が切れているか切れそうになっているM39、そして重量約226kgの弾頭を搭載するM48が供与の対象となることを意味しているようだ。新しいM57は米軍に残る。

M39とM48があれば、ウクライナ軍が運用する60基ほどのM270とHIMARSで発射するものの選択肢が増える。M39のM74子弾は、ロシア軍の飛行場や兵站施設を吹き飛ばすことができる。M48はハープーン対艦ミサイルから借用した貫通弾頭で掩体(えんたい)壕を爆破し、建物を崩壊させることができる。

だがロシア軍の戦車が攻めてきたら、ウクライナ軍は別の弾薬で狙うかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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