欧州

2023.10.20 12:00

ウクライナのミサイル「ATACMS」は残念だが戦車を破壊できない

Getty Images

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米国がウクライナに供与したばかりのM39「ATACMS」弾道ミサイルは、飛行場に駐機しているヘリコプターを破壊して連隊の戦力を削いだり、補給部隊に打撃を加え、防空網に穴を開けたりすることができる。

だが、M39にできないこともたくさんある。その1つが、防御力が高い戦闘車両の破壊だ。理由は明快で、M39の弾頭からは擲弾(てきだん)サイズの子弾が1000発ほどばらまかれるが、運良く命中した場合でない限り、子弾には1発で戦車に深刻なダメージを与えるほどの威力はない。

M39は重量2トン、全長4mの弾道ミサイルだ。固体ロケットモーターと、950個のM74子弾を内蔵する弾頭を搭載している。1990年代に製造されたこのミサイルは、装軌式のM270多連装ロケットシステム(MLRS)や装輪式の高機動ロケット砲システム(HIMARS)から発射されれば慣性誘導のもとで最大約160km飛ぶ。

米陸軍には、ロケットモーターの寿命が切れているか切れそうになっているM39の在庫が数百発ある。バイデン政権はここ数週間で、おそらく固体ロケットモーターを検査した後に、非公開の数のM39をウクライナに密かに送った。

16日夜から翌朝にかけて、ウクライナ軍が運用するHIMARS3基からM39が1発ずつ、ロシアに占領されている南部ベルジャンシクの郊外にある飛行場に向けて発射された。M39はロシアの防空網近くを猛スピードで通過し、飛行場北側の駐機場に3000発近くのM74をばらまいた。そして、そこに駐機していたロシア空軍の攻撃ヘリのミルMi-24とカモフKa-52を爆破した。

ウクライナ軍はヘリコプター9機を破壊したと主張し、アナリストらは6機の破壊を確認した。いずれにせよ、損失は大きかった。ロシアがウクライナに侵攻して1年9カ月目に入る中、通信アプリ「テレグラム」のロシアの人気チャンネル「ファイターボンバー」は今回の攻撃について「これまでで最も深刻な攻撃の1つ」と評している
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翻訳=溝口慈子

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