ライフスタイル

2023.10.23 12:30

日本古来のクリエイティブな感性を生かす「デジタル時代の粋」

Forbes JAPAN編集部

ポジティブ変換。AIのつくる「粋」

ヘイト投稿を観光施策に逆転させた「Go Back To Africa」。北米に暮らす黒人に対して、ルーツである「アフリカに帰れ!」という悪意あるフレーズを含んだ投稿がされると、AIが自動で検知し、その投稿をジャック。「Go Back To Africa」だけを残し、ほかの悪意に満ちているテキスト部分は黒く塗りつぶし、そのうえで、アフリカに旅行に出かけたくなるような美しい写真とともに投稿し直されるというもの。ネガティブな要素をポジティブに変換する「粋」な発想だ。
「Go Back To Africa」というヘイト投稿がアフリカ旅行を誘うフレーズへ。

「Go Back To Africa」というヘイト投稿がアフリカ旅行を誘うフレーズへ。

利益はおこぼれ。3Dプリンターの「粋」

家庭用3Dプリンターは1万円台から購入でき、住宅も3Dプリントする時代。「Fixperts」は、日常生活において個人的な問題を抱えたFIXPERTNERに対して、デザインによる解決を図るプロジェクト。近年3Dプリンターを活用し、ものづくりをするチームも増えている。それは3Dプリンターはどんな複雑な造形でも1点からつくることができ、修正も検証もすぐにできるため、ひとり個人のために本当に必要なものを考え尽くし、繊細な検証を重ねることができる。稼ぐためにつくられたものではなく、目の前の人に喜んでもらえることを追求したものづくり。利益はその任務に懸命に努力した結果に対する「おこぼれ」に過ぎないという古来の考えが生きている。
3Dモデル上で3Dスキャンした顔に合う形を模索し、そのまま3Dプリントして検証する。

3Dモデル上で3Dスキャンした顔に合う形を模索し、そのまま3Dプリントして検証する。

デジタル時代でも他にも多くの「粋」が生きている。「日本はもうダメだ」論が行き交う今日だが、本当にそうなのだろうか。テクノロジーが進化した今、あなたがプログラマーでも医者でもマーケターでも、どんな職種であろうと、どこにいようと、相手を想像し思いやる心をもつことや、人情の機微に通じた振る舞いをすることも、ネガティブなものをポジティブに変換するアイデアを実現させることもできる。職種も場所もメディアも時間も縛られないデジタル時代の今こそ、「粋」な心を再び日本から生かすチャンスなのではないだろうか。世界中で「粋ダネエ」という言葉が飛び交う日を夢見ている。


電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

鈴木舞◎電通Bチームに入りたかった人。“粋”をさまざまな視点から探求し、“粋”の宿る伝統工藝「組子」を通じて「真の豊かさとは何か」を問う。電通を独立後プロダクトデザインを軸に戦略企画から携わる。

文=鈴木 舞 イラストレーション=尾黒ケンジ

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年11月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

連載

電通Bチームの NEW CONCEPT採集

ForbesBrandVoice

人気記事