プロトタイピングをもっと気軽に。身の丈プロトタイピング

ラピッドプロトタイピングを試そうとしたが、プロセスの型にうまく当てはめることができずに試す最初の段階で行き詰まってしまう。プロジェクトの進行も遅くなる。

プロジェクトのプロトタイプをつくるときには無理に決まった型でやるのではなく、自分たちに合ったやり方がうまくいく。そんな身の丈に合ったプロトタイピングのやり方を、事例や実践法と共に紹介していく。


プロトタイピングとは、製品やサービスのプロトタイプを制作して事前検証を行うことで、精度や効率を高める手法のこと。通常ソフトウェアやハードウェアの開発で用いられることが多いですが、現在はさまざまなプロジェクトで活用されています。プロジェクトの小さなモデルをつくり、テストすることでプロジェクトの完成度を高めていくのです。

デザイン思考のラピッドプロトタイピング。プロトタイプを迅速に制作し、テストし、フィードバックに基づいて変更を加えていくというプロセスです。

しかし「ラピッド」というネーミングのせいでしょうか、急いで早くやらなければならないというイメージが強く、また直線的で型があり柔軟性が少ないと感じる方も多いようです。そのため、ラピッドプロトタイピングを試してみたけれど、うまく行かなかったなんていうことも。

ではそれぞれのプロジェクトにおいてどのようにプロトタイピングすればよいのでしょうか?

私がゲームデザイナーとしてボードゲーム製作に携わるときに、プロトタイピングは欠かせません。思いついたゲームアイデアは、実際に遊んでみないと面白いのか面白くないのかわからないからです。

「ポラリッチ」というゲームをつくる時のプロトタイプは、息子が1年生の時の算数ブロック。

「ポラリッチ」というゲームをつくる時のプロトタイプは、息子が1年生の時の算数ブロック


テストプレイ用のプロトタイプはとりあえず遊べればいいので、一からデザインをしてつくるというより、ほかのゲームで使用する駒やサイコロを寄せ集めたり、紙を切ったり貼ったりしてつくることでプロトタイプ製作のスピードを上げています。

思いついたアイデアはすぐにでも試したいのです。プロトタイピングで大切なのは「とりあえず始めてみること」。決まったやり方はありません。多種多様に、プロジェクトの状況や、チームの温度感などに応じてプロトタイピングすればいいのです。それが今回ご提案する「身の丈プロトタイピング」です。

自分にできることでつくってみる

実に14年ぶりに任天堂の新しいキャラクターを生み出したゲーム「スプラトゥーン」。

白と黒の豆腐がインクを塗り合うだけ、というプロトタイプから始まったそうです。カラーではなくモノクロ。人型ではなく直方体。そんな状態でも企画が採用される決め手となったのは、プロトタイプの時点で4人対4人のオンラインで遊べるようになっていたこと。伝えたいことだけを伝えるためにつくられていたこと。

プログラマーが自分自身の強みをいかしてプロトタイプをつくって提案をしたところからスプラトゥーンの快進撃は始まったのです。
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文=大山 徹 イラストレーション=尾黒ケンジ

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電通Bチームの NEW CONCEPT採集

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