弾薬を輸送する列車を攻撃するのに、ウクライナ軍はドローンや現地の非正規軍から得られる有用な最新情報が必要だった。同時に、最も迅速かつ正確な砲撃を行えるよう、物資を揃えなければならなかった。GPSで誘導される砲弾エクスカリバーと多連装ロケット弾だ。
エクスカリバーは米国製のM777榴弾砲から発射され、射程距離は約30kmだ。HIMARSの発射機から発射されるGPS誘導の多連装ロケットシステム(GLMRS)は約70km先まで飛ぶ。
ロシア軍が対砲兵射撃をしにくくなるよう、ウクライナ軍はM777榴弾砲を前線から数km離れたところに配備。貴重なHIMARSはさらに遠くに置いている。ウクライナ軍の精密な大砲がトクマクを通過する列車を仕留められるようにするには、おそらくトクマクの北約19kmに位置するロボティネあたりの戦況を安定させる必要がある。
最も装備の整った第47機械化旅団や第82空中強襲旅団といったウクライナ軍の強力な旅団はこの夏、多大な犠牲を払いながらロボティネまで前進し、8月にようやくロボティネを解放した。間を置かずして砲兵隊もその後に続き、トクマクにあるロシア軍の兵站拠点を標的にした作戦が本格的に始まった。
ウクライナは夏に開始した反攻を秋から冬にかけても継続しようとしており、今後数週間から数カ月の間に、トクマク周辺でロシアの列車や車列に対する精密攻撃がさらに行われることが予想される。また、ロシア軍がそうした攻撃に適応する、あるいは少なくとも適応しようとすることも予想される。
ロシアはメリトポリから約160km東の黒海沿岸に位置する、占領下のマリウポリを通る新しい鉄道を建設しているようだ。この鉄道が完成すれば、ウクライナ南部を通っているロシア軍の陸上の補給線がトクマクから黒海沿岸近くへと移る可能性がある。
ロシア軍が状況に応じて兵站システムを迅速に変更することができれば、ウクライナ軍に目標の見直しを強いることができるかもしれない。ロシア軍が補給線をもっと南へ移動させれば、ウクライナ軍はその補給線を確実に攻撃するために、さらに南へ進軍しなければならないだろう。
それはウクライナにとって不吉な展開となる。トクマクを制圧するために、ウクライナ軍は多くの車両とおそらく何千人もの命を犠牲にした。黒海沿岸地域を掌握するにはそれ以上の犠牲がともなう可能性がある。
(forbes.com 原文)