世界一の富豪が作った「バカげたクルマ」
テスラはサイバートラックのスペックの詳細を明かしていないため、現状ではその環境への優しさを正確に評価することができない。英国の自動車調査会社エミッション・アナリティックスのニック・モールデンCEOは「購入者が同サイズのガソリン駆動のトラックをサイバートラックに買い換えたと仮定した場合、トータルでCO2排出量を約50%削減できる可能性がある」と述べた。しかし、走行距離がガソリン車よりも短かった場合は、環境面でのメリットが、ガソリン車を下回る可能性があると、彼は指摘した。なぜなら、サイバートラックの製造段階で発生するCO2は、ガソリン式のピックアップを大きく上回るからだという。
さらに、重量級のEVは、従来の自動車よりも有害なタイヤダストを発生させるとモールデンCEOは述べている。タイヤに使用される有害な化学物質は、米国のサケの個体数の減少との関係が指摘され、タイヤダストは肺や心臓病の原因になると見られている。
サイバートラックはまた、欧州連合(EU)の歩行者や自転車利用者に対する安全規制を満たしていない模様で、現状のままでは販売できないと見られている。
「サイバートラックが歩行者や自転車利用者に与える危険性を見過ごすことは難しい。CO2の削減を安全とトレードオフすることはできない」と、ハーバード・ケネディ・スクールの交通問題研究者のデイビッド・ジッパーはフォーブスに語った。
一方、生物多様性センターのベッカーのような環境保護主義者は、自動車業界が、政府の燃費要件がそれほど厳しくなく、収益性が高いピックアップやSUVへとシフトしていることに対して、以前から怒りを表明してきた。
「私にとってサイバートラックは理解し難いシロモノでとても変わったクルマだと思う。それに、このクルマはツイッターに400億ドルもの大金を費やし、それを失敗に追い込んだ人物が生み出したのだ。彼は他の誰とも違う変わり者だ。私は精神科医ではないが、これはバカげた乗り物だと言える」とベッカーは語った。
(forbes.com 原文)