それから17年が経った現在、テスラが年内に発売する予定の巨大な電動ピックアップトラックの宣伝文句は、気候変動の問題にまったく触れていない。
「サイバートラックは、究極の耐久性と乗員保護を実現するエクステリアシェルを採用しています」と、同社のウェブページには書かれている。「貫通するのはほとんど不可能なエクソスケルトン(外骨格)をはじめ、ウルトラハードなステンレススチール構造のスキン、アーマーガラスまで、さまざまな部品が優れた強度と耐久性を実現します」
今から約4年前の2019年11月の発表イベントで、マスクはSF映画から飛び出してきたかのようなルックスのこの電動ピックアップの横に立ち「本当にタフなトラックを見せてやろう。ハンマーでぶん殴ってもヘコまないんだ」と得意気に言った。しかし、マスクの指示で社員が鉄球を「防弾仕様」とされる窓ガラスにぶつけたところ、大きなヒビが入り「なんてこった!」とマスクは叫んだ。
テスラのファンサイトは、それ以来、このクルマを予約した人が150万人を超えたと推定しているが、テスラは100ドルの予約金を支払った顧客の数を明らかにしていない。どの程度売れるかは定かではないが、1つ言えるのは、環境保護主義者はこのクルマを嫌っているということだ。
生物多様性センターの幹部のダン・ベッカーは「GMのハマーEVと同じ稚拙な考え方がサイバートラックにも感染している。私はこのクルマを見て歓喜している人間ではない。私はこのクルマが販売されないことを望んでいる」と語った。
気まぐれな世界一の富豪が電動ピックアップを推し進めるのは、環境保護への熱意からではなく利益追求のためだ。米国人は昨年、平均価格が5万9000ドルのピックアップを約200万台も購入した。つまり、仮にテスラが年間10万台のサイバートラックを6万ドル以上で販売すれば、同社は年間60億ドル(約8900億円)以上の追加の収益を得ることになる。